江戸幕府が百姓の生活を統制するために出したとつたえられる法令。1649(慶安2)年,第3代将軍徳川家光のとき定めたとつたえられ,32か条ある。百姓の支配を徹底させ,年貢の収納を完全にすることが目的。内容は,「早おきして草をかり,昼は田畑で,夜は縄ないなどしてよくはたらくこと」「酒・たばこ・茶はのまぬこと」「木綿以外の着物はきない」など,田畑の耕作から日常生活全般にわたって細かくきめられている。
史料
慶安の御触書のおもな内容
一.公儀(幕府)御法度を恐れ,地頭・代官の事をおろか(おろそか)に存ぜず,さてまた,名主・組頭をば,真の親とおもふべき事。
一.朝おきをいたし,朝草を刈り,昼は田畑耕作にかかり,晩には縄をなひ,たはら(俵)をあみ,何にても,それぞれの仕事,油断無く仕るべき事。
一.百姓は分別もなく末の考もなき者ゆへ,秋になり候へば,米・雑穀をむさ(むざむざ)と妻子にもくはせ候,いつも正月・二月・三月時分(年貢納入後)の心をもち,食物を大切に仕るべく候に付,雑穀専一に候間,麦・粟・稗・菜・大根,其外何にても雑穀を作り,米おふ(多)く喰いつぶし候はぬやうに仕るべく候。
一.……百姓は衣類之儀,布木綿より外は,帯,衣裏にも間敷事。慶安二(1649)年二月廿六日