シダしょくぶつ【シダ植物】

植物分類(ぶんるい）上の門(もん）の1つ。胞子(ほうし）植物のうち最(もっと）も高等な一群(ぐん）。シダ類(るい）ともいう。植物体は完全(かんぜん）な根・茎(くき）・葉の区別(くべつ）があり，維管束(いかんそく）が発達(はったつ）して，多くは陸上(りくじょう）で生活する。葉緑体があって光合成(こうごうせい）を行う。胞子(ほうし）による無性生殖(むせいせいしょく）と，精子(せいし）と卵(らん）による有性生殖(ゆうせいせいしょく）が交互(こうご）にくりかえされるが，無性(むせい）世代の体が主体となっている。

〔シダ植物の体〕

多くのものは地上に直立する茎(くき）がなく，地下茎(けい）（根茎(こんけい））から，細い根が多数出る。この根は地中の水や無機養分(むきようぶん）を吸収(きゅうしゅう）することができる。葉は羽状複葉(うじょうふくよう）のものが多く，長い柄(え）のあるものも多い。ワラビなどの茎(くき）のように見える部分は葉柄(ようへい）である。種子(しゅし）植物と同じように，維管束(いかんそく）は根から茎(くき）・葉へとつながっていて，水や養分(ようぶん）を移動(いどう）させることができる。成長(せいちょう）すると，葉の裏(うら）などに胞子(ほうし）のう群(ぐん）ができる。

〔シダ植物のふえ方〕

胞子(ほうし）のう群(ぐん）の中には多くの胞子(ほうし）のうがあり，成熟(せいじゅく）すると多数の胞子(ほうし）をばらまく。胞子(ほうし）が発芽(はつが）して，ハート型(がた）をした長さ1cmほどの前葉体といわれるものになる。この前葉体も緑色で光合成(こうごうせい）を行う。前葉体の裏(うら）に造精器(ぞうせいき）や造卵器(ぞうらんき）ができ，精子(せいし）や卵(らん）がつくられる。精子(せいし）は雨の日などに，水中を泳いで卵(らん）に達(たっ）して受精(じゅせい）する。受精卵(じゅせいらん）は造卵器(ぞうらんき）に入ったままで発芽(はつが）し，わかいシダの体になる。これが成長(せいちょう）するころに，前葉体はかれる。

コーチ

ふつうに見ているシダ植物は胞子(ほうし）をつくる体（胞子体(ほうしたい））であるが，コケ植物は卵(らん）や精子(せいし）をつくる体（配偶体(はいぐうたい））である。

〔胞子(ほうし）の観察(かんさつ）〕

イヌワラビやワラビなどの胞子(ほうし）のうをピンセットでとり，スライドガラスにのせ，軽くほのおの中を通すと，胞子(ほうし）がはじき出される。これを顕微鏡(けんびきょう）で観察(かんさつ）する。スギナの胞子(ほうし）は，ツクシの穂(ほ）から簡単(かんたん）に得(え）られる。