1972年にユネスコの総会で採択された世界遺産条約にもとづいて,世界遺産リストに登録されたすぐれた文化財や自然環境のこと。人類が過去にのこした遺跡や文化的価値の高い建造物・記念物などの文化財,また,地球上のかけがえのない貴重な自然環境を,国際的な協力や援助によって損傷や破壊などの脅威から保護・保全し,後世に受けついでいくことを目的とする。
〔世界遺産の原点〕
1959年エジプトのナイル川でアスワンハイダムの
建設計画がおこり,古代エジプトの
遺跡アブシンベル
神殿が
水没の
危機に直面したが,ユネスコが
遺跡の
保護を世界に
呼びかけ,多くの国の
協力で
遺跡は
救済された。これが世界
遺産の発想の原点といわれる。
また,1972年になるとユネスコは「人間と生物
圏計画」を発足させ,世界の目が
自然保護にむけられていった。世界
遺産条約がユネスコのパリ本部で
開催された第17回の
総会で
満場一致で
採択されたのはこの年の11月16日,
条約の発行は1975年12月17日だった。
〔世界遺産リスト〕
世界
遺産条約の
締約国は2013年11月
現在,アメリカ
合衆国・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアなど190か国。
締約国が,ユネスコ本部に自国内の世界
遺産リストへ
登録する
候補地を
推薦すると,
翌年の12月に開かれる世界
遺産委員会(ユネスコ内に
設けられ,21か国で
構成,
任期は6年,2年ごとに3分の1が交代)で
審査を
受け,世界
遺産リストに
登録される。
〔世界遺産の種類〕
世界
遺産は,
(1)
世界的にみて
価値の高い
建造物・
記念物や
彫刻・絵画などの文化
遺産,
(2)すぐれた
価値をもつ地形や生物や
景観をもつ
自然遺産,
(3)文化
遺産と
自然遺産の両方の
要素をもつ
複合遺産の3つに
分類される。2013年11月
現在,文化
遺産759,
自然遺産193,
複合遺産29,
総計981が世界
遺産リストに
登録されている。世界
遺産のなかには,
悲惨な
戦争の
遺跡など
人類の「
負の
遺産」もふくまれている。また,大
規模な
自然災害・
武力紛争や開発などで
自然環境が悪化し,「
危機にさらされている世界
遺産リスト」に
登録されるものもある。こうした
危機遺産は,
締約国が
分担する世界
遺産基金によって,
調査や
修復などの
保護活動がすすめられる。
〔世界遺産リストへ登録〕
日本は1992(
平成4)年に世界
遺産条約を
批准した。世界
遺産条約がユネスコで
採択されてから,20年後である。日本の世界
遺産への
登録手順は,国内で
文化財保護法や
自然環境保全法,
自然公園
法などによって
保護されているものを,国が
推薦し,世界
遺産委員会で
審査されて,世界
遺産リストに
登録されている。
〔登録されている遺産〕
1998年12月には日本ではじめて世界
遺産委員会が
開催され,このとき日本では,「古都
奈良の
文化財」が
登録された。2017年10月
現在,日本には文化
遺産が17,
自然遺産が4の合わせて21が世界
遺産リストに
登録されている。