＊＊ちほうじち【地方自治】

都道府(ふ）県・市区町村などを単位(たんい）として，その住民(じゅうみん）が自主的(じしゅてき）に政治(せいじ）を行うこと。

〔地方自治(じち）のしくみ〕

 地方自治(じち）を行う団体(だんたい）を地方公共団体(こうきょうだんたい）といい，地方公共団体(こうきょうだんたい）には，議決機関(ぎけつきかん）として地方議会(ぎかい）があり，執行機関(しっこうきかん）として首長とその補助機関(ほじょきかん）がある。

（1）地方議会(ぎかい）…地方議会(ぎかい）（都道府(ふ）県議会(ぎかい）と市区町村議会(ぎかい））は，一院制(せい）で，議員(ぎいん）は住民(じゅうみん）の直接選挙(ちょくせつせんきょ）によってえらばれる。地方議会(ぎかい）は，年4回以内(いない）開かれる定例(ていれい）会とその他の臨時(りんじ）会があり，議事(ぎじ）は原則(げんそく）として公開される。地方議会(ぎかい）のおもな仕事は，条例(じょうれい）の制定(せいてい），予算の決定と決算の承認(しょうにん），地方行政(ぎょうせい）の監督(かんとく）などがある。

（2）執行機関(しっこうきかん）…都道府(ふ）県の首長は知事，市区町村の首長は市区町村長である。また，首長の補助機関(ほじょきかん）として，首長の補佐(ほさ）をする副(ふく）知事（都道府(ふ）県）・副市区町村長（市区町村），多くの吏員(りいん）（職員(しょくいん））がおかれている。

（3）行政(ぎょうせい）委員会…行政(ぎょうせい）委員会は，首長や補助機関(ほじょきかん）からある程度独立(ていどどくりつ）をみとめられた合議制(ごうぎせい）の機関(きかん）で，教育委員会・公安委員会・選挙管理(せんきょかんり）委員会などがある。

〔地方議会(ぎかい）と首長〕

 議会(ぎかい）と首長の間で意見が対立し，条例(じょうれい）や予算などの議決(ぎけつ）に首長が異議(いぎ）ある場合は，議会(ぎかい）に再議(さいぎ）を要求(ようきゅう）できる。議会(ぎかい）がきめるべき問題をいつまでも議決(ぎけつ）しないときには，首長みずからきめることができる。議会(ぎかい）は，首長の方針(ほうしん）に反対であれば，不信任(ふしんにん）の議決(ぎけつ）をすることができる。

コーチ

 議会(ぎかい）が不信任(ふしんにん）の議決(ぎけつ）をした場合，首長は10日以内(いない）に議会(ぎかい）を解散(かいさん）することができる。そして，解散(かいさん）後はじめて召集(しょうしゅう）された議会(ぎかい）で，ふたたび首長の不信任(ふしんにん）が議決(ぎけつ）された場合に，首長はその職(しょく）をうしなう。

〔住民(じゅうみん）の権利(けんり）〕

 地方公共団体(こうきょうだんたい）には，住民(じゅうみん）の意思を地方自治(じち）に反映(はんえい）させるため，以下(いか）のような権利(けんり）がみとめられている。

（1）直接請求(ちょくせつせいきゅう）…

ア．条例(じょうれい）の制定(せいてい）・改廃(かいはい）の請求(せいきゅう）…条例(じょうれい）をつくったり，あらためたり，廃止(はいし）したりすることを議会(ぎかい）で審議(しんぎ）するよう請求(せいきゅう）できる。

イ．監査請求(かんさせいきゅう）…地方公共団体(こうきょうだんたい）や執行機関(しっこうきかん）の事務(じむ）のしかたなどを調べて，その結果(けっか）を公表するように請求(せいきゅう）できる。

ウ．解散請求(かいさんせいきゅう）…議会(ぎかい）の解散(かいさん）を請求(せいきゅう）できる。

エ．リコール（解職請求(かいしょくせいきゅう））…議長(ぎちょう）や首長などの解職(かいしょく）を請求(せいきゅう）できる。

コーチ

 上のア．イ．には，その地方公共団体(こうきょうだんたい）の有権(ゆうけん）者数の50分の1以上(いじょう）の署名(しょめい）が必要(ひつよう）である。また，ウ．エ．には3分の1以上(いじょう）の署名(しょめい）が必要(ひつよう）である。

（2）住民投票(じゅうみんとうひょう）（レファレンダム）…1つの地方公共団体(こうきょうだんたい）にしか適用(てきよう）されない特定(とくてい）の法律(ほうりつ）は，国会で可決(かけつ）されたとしても，その地域住民(ちいきじゅうみん）の過(か）半数の賛成(さんせい）がなければ成立(せいりつ）しない。

（3）請願(せいがん）…住民(じゅうみん）は地方公共団体(こうきょうだんたい）の仕事について，議員(ぎいん）の紹介(しょうかい）をもって請願(せいがん）することができる。請願(せいがん）は請願(せいがん）書を提出(ていしゅつ）して行う。

〔地方公共団体(こうきょうだんたい）の仕事〕

 自治体(じちたい）の責任(せきにん）で処理(しょり）する仕事（自治事務(じちじむ））のほか，法律(ほうりつ）で国から委託(いたく）された仕事（法定受託事務(ほうていじゅたくじむ））も行う。

（1）自治事務(じちじむ）…法定受託事務(ほうていじゅたくじむ）以外のすべての仕事，学校・病院などの設置(せっち）・管理(かんり），上下水道工事，交通事業など。

（2）法定受託事務(ほうていじゅたくじむ）…戸籍(こせき）や外国人登録(とうろく），国会議員(ぎいん）の選挙(せんきょ），失業対策(しつぎょうたいさく）事業など。

〔地方公共団体(こうきょうだんたい）の財政(ざいせい）〕

 地方財政(ざいせい）の支出(ししゅつ）は教育費(ひ）と土木費(ひ）で約(やく）半分をしめる。

（1）自主財源(ざいげん）…地方公共団体(こうきょうだんたい）がみずから得(え）ることができる収入(しゅうにゅう）の大部分は，住民税(じゅうみんぜい）や固定資産税(こていしさんぜい）などの地方税(ぜい）である。

（2）国からの交付(こうふ）…地方税(ぜい）は全体の2分の1ほどしかないため，のこりは国庫支出(ししゅつ）金（国と関係(かんけい）がある仕事に使い道を限定(げんてい）して交付(こうふ））や地方交付税(こうふぜい）交付(こうふ）金（地方公共団体(こうきょうだんたい）の財政(ざいせい）上の格差(かくさ）をなくす目的(もくてき）で交付(こうふ））などでまかなわれている。