（1939〜2012）昭和・平成時代の漫画家。原爆被害の悲惨さ，平和の尊さを描いた漫画『はだしのゲン』の作者として知られる。広島市生まれ。1945（昭和20）年8月，小学校1年生のとき広島の原子爆弾で被爆，父と姉・弟を同時に失った。手塚治虫の漫画を読んで感動し，中学校卒業後，看板屋につとめながら漫画の修業をする。61年，上京して，一峰大二，辻なおきなどの漫画家のアシスタントをしながら63年にデビューする。現代スパイもの，少年の成長もの，当時流行の怪獣ものなどを描いたが，あまり売れなかった。当時は原爆被爆者への差別もあり，また原爆についてふれてはいけないような世間の風潮もあって，原爆を題材にした漫画は描かず，被爆者であることも隠していた。66年，母の死をきっかけに原爆漫画を描きはじめたが，最初はどこの出版社も掲載・出版はしてくれなかった。68年，ようやく原爆漫画第1作『黒い雨にうたれて』を発表，好評をよび第2，3作と続き，73年，『はだしのゲン』の長期連載を開始した。『はだしのゲン』は反核反戦漫画の名作として大きな反響をよんだ。その後，原爆漫画以外の少年ものの短編作品もいくつか発表している。『はだしのゲン』第2部の構想も練っていたが，糖尿病による視力低下のため2009（平成21）年に漫画家を引退。自作漫画の映像化や原爆・戦争についての発言などを行っていたが，2012年12月，肺がんのため死亡。
