1951年に子宮頸がんで死亡したアメリカの30代の黒人女性ヘンリエッタ=ラックス(Henrietta Lacks)のがん組織から分離され,培養された細胞株。世界で最初に分離・培養に成功したヒト由来の細胞株で,基本的にがん細胞は不死なうえ,急激に分裂・増殖するため,世界中の研究機関で培養され,実験に用いられ,商業的に売買されることもあった。がん細胞であるがヒト細胞のモデルとして,ウイルス感染,RNA生合成,細胞周期などのさまざまな実験に使われて大きな成果をもたらし,現在でも利用されている。分離以来60年ほどになり,培養によってすでに生前のラックスの体全体より細胞数は多くなっていると推定され,また,ラックスの遺族が20年以上もその存在を知らされなかったことも話題となった。