『万葉集』第5巻におさめられている山上憶良の長歌。氷雨の夜には寒さにふるえながらも,ひげをなでながら自分ほどえらい人間はないと自慢をしている。だが,そのまわりでは女房・子どもがひもじさに泣いている。どうして自分だけがこんなめにあわなければならないのか,世の中は無常なものだ,という内容の歌。
コーチ
律令制のもとで苦しい生活にあえぐ
農民のすがたがえがかれている。
史料
貧窮問答歌
……かまどには 火気ふき立てず 甑には 蜘蛛の巣かきて 飯炊ぐ 事も忘れて 奴延鳥の のどよひをるに いとのきて 短き物を 端切ると 言へるがごとく楚取る 里長が声は 寝屋処まで 来立ち呼ばひぬ かくばかり 術なきものか 世間の道。