14〜16世紀に,ヨーロッパで見られた大規模な文化活動。古代ギリシャ・ローマ文化の再現をはかったので,「文芸復興」ともいう。ルネサンスは「再生」の意味。
〔イタリアのルネサンスの背景〕
イタリアでは,13世紀ころから東方貿易によってフィレンツェなどの都市が発展し,豊かな商人が市の政治をにぎり,活気にみちた市民社会をつくった。自由で自信にみちたかれらは,現実の人間や自然をありのままに見る人間中心の合理的な文化をもとめ,古代ギリシャ・ローマに理想を見いだした。
〔人文主義〕
ペトラルカ・ダンテらの人文主義者(ヒューマニスト)は,古典の研究で知性をみがき,ゆたかな生きかたをもとめた。ダンテは当時のイタリア語で『神曲』を書いて国民文学を始め,ボッカチオは『デカメロン』で世の中を皮肉り,マキアベリは『君主論』で政治技術を説いた。
〔美術・建築〕
絵画・彫刻は,かつて教会の付属物だったが,宗教からはなれて人間の肉体美を写実的に表現した。レオナルド=ダ=ビンチやボッティチェリなどが著名であるが,なかでもダ=ビンチは絵画ばかりでなく,自然科学でも多くの研究をした。都市の大商人や都市貴族・法王が学者や芸術家たちを支援したが,イタリアでは,やがて政治の混乱にくわえ,新航路の発見で世界商業の中心が大西洋側にうつったため,文化活動もおとろえはじめた。
〔ルネサンス運動の広がり〕
西ヨーロッパ諸国のルネサンスは,イタリアにややおくれてあらわれ,人文主義者と文学者の活動が特徴である。エラスムスら人文主義者は,『聖書』をもとの言語で研究し,宗教改革をうながした。イギリスは『ユートピア』で社会を批判した人文主義者トーマス=モア,大劇作家シェークスピアを出し,スペインではセルバンテスが新しい文学を始めた。
〔自然科学と技術の発達〕
火薬・羅針盤・活字印刷はルネサンスの3大技術で,社会を変革する大きな力となった。また力学・天文学・光学が発達し,ガリレイは地動説を主張した。それらは大航海時代をうながし,ヨーロッパを新しい時代に引きこんでいった。
コーチ
イタリアには古代ローマの遺跡が多く,そのうえ,ビザンツ帝国の滅亡でローマの古典文化に明るい学者たちが亡命してきたことも,ルネサンスをうながした。