メニュー閉じる

簡単で節約も!持続可能な「ローリングストック」って?【防災のプロに聞く】

簡単で節約も!持続可能な「ローリングストック」って?【防災のプロに聞く】

災害はいつどこで起こるかわかりません。だからこそ、普段からの備えが大切。そんな私たちの生活に必要不可欠な防災が、じつはSDGsに深く関係していることをご存知ですか?

今回は、国際災害レスキューナースとして活躍する辻直美さんに、防災にもSDGsにも関わる「ローリングストック」について教えてもらいました。

持続可能な防災は、特別な準備もお金をかける必要もなし

防災と言うと、「特別な準備をしなくちゃいけない」「面倒だ」と思っている人が多いかもしれません。「防災用」「非常用」と謳われているものを買い揃えるとお金がかかるし、保管場所を確保するのも一苦労ですよね。

一方で、長期保存できるお水や保存食を防災リュックの中に準備したはいいけれど、気づいたら賞味期限切れになっていた……という話もよく耳にします。

また、台風の予報を見て、直前に慌ててスーパーやコンビニに行き、とりあえず棚に残っていたレトルト食品を買って対策する人も多いのではないでしょうか。

そのまま食べるタイミングがなく結局廃棄……というのも”防災あるある”。これでは食品ロスにつながってしまいますし、何のための備えかわからなくなってしまいます。

私が考える防災は「日常生活の延長として実践できるもの」。

防災のために何か特別な準備をしなければと気負ったり、その場限りの対応をしていては、持続していくことは難しい。だからこそ、いつも使っているもの、食べ慣れているものを、そのまま災害時にも利用すればいいと思うんですよ。

在宅避難でも避難所に行ったとしても、いつもと同じ味、食べ慣れているものが食べられるだけで安心して過ごすことができるので、大きな心の支えにもなります。

そうすれば無駄も出ないし、余分にお金をかけなくていいので節約にも繋がります。まさにSDGsだと思いませんか?

普段の買い物の延長だから無駄がない!プロ流「ローリングストック」

災害時に普段と変わらない生活を送るためにまず実践してほしいのが、「ローリングストック」です。

ローリングストックってなに?

ローリングストックとは、普段から少し多めに食材や加工品を買いそろえて、使った分だけ買い足していく方法。とっても簡単なんですよ。

ポイントは2つ。賞味期限順に並べておいて、期限が短いものから使うこと。そして、使った分だけ買い足して補充することです。

そうすると、常に一定量の食料が保存できます。また、消費と購入を繰り返すことでストックを入れ替えていけるので、賞味期限切れで廃棄することもなくなるでしょう。

日常でも被災時でも大活躍してくれるローリングストックは、お子さんと一緒に取り組むとSDGsについて学べるいい機会になると思います。

スタメンを揃えよう!ローリングストックの手順

常備した食糧を日常的に使っていくだけでも十分ですが、さらにワンランクアップしたローリングストックを実践するのであれば、スタメンを決めましょう。

じつは防災用の食料の備蓄って、水も火も使えない状況で食べられるものだけではありません。カセットコンロとガスボンベがあると、アレンジして調理することができるんです。

「我が家のスタメン」=普段から料理によく使う、なおかつ家族みんなが好きな味。ぜひ家族会議の時間をつくって、家族が好きなメーカー・好みの味など常備したい食材を決めてみてください。

決め方は簡単。パスタソース、フリーズドライのお味噌汁、カップスープの素、インスタントラーメン、冷凍うどん、パスタなど、ジャンル別に決めます。そして、常備しておく数を決めましょう。

たとえばパスタのレトルトソースなら、我が家の場合はカルボナーラ、ジェノベーゼソース、トマトソースの3種類を各2つずつ、合計6つは揃っている状態にしています。

そして、100円ショップの収納グッズやお菓子の空き箱などを利用して、ストックしておくと便利です。

辻さん宅のキッチン収納。何がどれだけあるかわかるようにしておくと、ローリングストックが効率的に(画像提供/辻直美さん)

決めた数を賞味期限の短いものが手前になるように並べておくことで、使った分が一目瞭然。買い足す量が把握でき、管理もしやすい。

常に収納ケースが一杯の状態にしておくと、急な大雨や地震の際に、「買い物に行かなきゃ!」と慌てることがなくなります。

「ほかには何に使える?」工夫と想像力が防災につながる

お伝えした我が家のスタメンですが、じつはそのまま食べるだけではなく、複数の料理に活用できるというよさもあるんですよ。

たとえばパスタ用のカルボナーラソースは、グラタンやリゾットなどミルク系の料理の調味料として使うことができます。

トマトソースはどうでしょう。ミネストローネスープやラザニアのソースになりますよね。ジェノベソースは蒸し野菜にかけるだけでイタリア風サラダに早変わり。

災害時の食事と言うと味気ないイメージがあるかもしれませんが、工夫次第でさまざまな料理にアレンジできます。被災時でも、お腹も心も満足できる食事は作れるということをお子さんも実感できるように、一緒に料理をしてみるのもいいですね。

食料以外も同様に、自由な発想で複数の使い方を考えてみましょう。ご飯は炊飯器がなくても鍋やフライパンで炊けます。防災専用のトイレがなくても、便器にゴミ袋2枚をセットし、その中に折りたたんだペットシーツ(ペットのトイレ用吸水シート)を置くことで代用できます。

ちなみにペットシーツは、防災グッズとして非常に万能なアイテム。水を含ませることで枕や氷のうに、お湯を含ませれば湯たんぽ代わりになるので、ペットがいないご家庭でもストックしておくと便利です。

辻さんに教えてもらったペットシーツの意外な使い方

物の使い道はひとつではありません。大切なのは、「これって、ほかに何か使えないかな?」と日頃から考えること。毎日の生活で使えて、さらに二役も三役も果たしてくれれば、節約になりますよね。

ぜひお子さんや家族で話し合いながら「我が家のスタメン」を決めて、無理なく続けられるSDGsなローリングストックを実行してみてくださいね。

 

取材・文/水谷映美 編集/石橋沙織

辻直美(つじ なおみ)さん ※辻は二点しんにょう

辻直美(つじ なおみ)さん ※辻は二点しんにょう

辻直美(つじ なおみ)さん ※辻は二点しんにょう

国際災害レスキューナース。一般社団法人 育母塾 代表理事。阪神・淡路大震災で実家が全壊したことを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。現在は講演会と防災教育をメインに、要請があれば被災地で活動を行っている。近著は『地震・台風時に動けるガイド 大事な人を護る災害対策』(発行:メディカル・ケア・サービス、発売:Gakken )。

PAGETOP