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読書はOK!動画視聴はNG?言語学者・金田一先生が教える「子どもの語彙力を伸ばす」ヒミツ

読書はOK!動画視聴はNG?言語学者・金田一先生が教える「子どもの語彙力を伸ばす」ヒミツ

新しい学年に進み、子どもにさまざまな力をつけさせたいと思う保護者は多いはず。なかでも語彙力は、すべての勉強に通じるものであり、大人になってからも必要とされる大切な力です。

そこで今回は、言葉のプロである言語学者・金田一秀穂先生に、子どもの語彙力をアップさせるヒミツ、そして遊びの中から育てる方法を教えてもらいました。

なぜ国語を勉強するの?「言葉」が持つ無限大のパワーとは

そもそも、なぜ私たちは国語を勉強するのでしょう?

それは、毎日の生活の中で、何をするにも「言葉」を使うからです。自分の気持ちを伝えたり、その時々の状況を説明したりするとき、私たちは必ず言葉を用いますよね。

たとえば「感動する」という感情ひとつとっても、「胸がいっぱいになる」「言葉が出ないほど驚いた」「心にしみいった」などいろいろな表現があります。語彙力がある、つまりいろいろな言葉を知っていると、よりピッタリの言葉で相手に自分の思いを伝えることができるんです。

目に見えない抽象的なものだって、言葉を使うことで具体的に伝えることができます。算数の「5+3=8」という数式も、「りんごが5つ、みかんが3つあります。全部でいくつあるでしょうか?」と文章題にすることで、イメージしやすくなりませんか?

知っている言葉が増えて、それらを正確に使えるようになると、周りの人との関係はさらに良くなりますし、この世界を正しく認識できる。広い視野で世の中を見ることができるようになるのです。

「最近の子どもは語彙力が乏しい」はウソ?

よく世間では、「若い子は言葉を知らない」「最近の子どもたちは語彙力がない」などと言われます。けれども、私はそうは思いません。

昔だって、語彙力が豊かな子もいれば、そうでない子もいました。それに、若い子たちは新しい言葉をすぐに覚えますよね。インターネットやスマートフォンを使ったシステムやアプリを進んで取り入れて、自由に使いこなします。私たち大人がなかなか覚えられないような言葉もしっかりと頭に入れている。

そういう意味では、令和の子どもたちの現状を憂うことはないし、心配しなくて大丈夫ですよ。

ただし、環境や周囲の働きかけによって、子どもの語彙力が上がることは本当です。だからこそ、日々の暮らしや周りの人との関係がもっとうまくいくように、子どもの語彙力を育てる方法を親が知っているといいかもしれませんね。

語彙力を増やすカギは、新しい言葉や表現に触れること

では、どうしたら語彙力をアップできるのでしょうか。一番の近道は、読書です。

語彙を増やすには、新しい言葉にたくさん触れることが大切です。家族や友だちとたくさん話すこともいいのですが、それだけだとどうしても出会う言葉の数やバリエーションに限界があります。

その点、読書は自分がまったく知らない人が書いた本を読むことで、知らない言葉や表現がたくさん出てきますよね。新しい言葉との出会いが、語彙力をどんどん豊富にしていくんです。

映画やドラマ、YouTubeなどの動画も、普段接しない人の話を聞くことができるのでいいと思います。ただ、映像の場合は言葉だけでなく、登場人物の動きや流れている音楽など、言葉以外の部分でも感情や情景が表されていますので、純粋に語彙力を伸ばしたいときには少し遠回りになってしまうかもしれません。

もしも動画をうまく活用するのであれば、好きなシーンを言葉で説明することがおすすめです。どんなシーンで、誰がどのように動いて、どんな気持ちを抱いているのか。これらを言語化するとなると、すごく難しいんですよ。音楽のおかげで楽しい雰囲気になったり、悲しい雰囲気になったりしていることにも気づくかもしれませんね。工夫次第で、動画を見ながら言語変換能力を鍛えることもできます。

ほかにも、親子でいろいろな言葉遊びを楽しむことも、語彙を自然に増やすためにおすすめですよ。

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語彙力は大事。でも、その子なりの表現方法を尊重することはもっと大切

親子の会話

もうひとつ、子どもの語彙力を伸ばすために大切なことがあります。それは、子どもの話に大人がうまく相槌を打つこと。

学校での出来事、友だちと遊んだことなどを子どもが話してくれるとき、まずはしっかりと耳を傾けましょう。そして、「そのとき、どんな気持ちだった?」「〇〇くんは何をしてたの?」と適宜質問をすることです。ヒーローインタビューさながら、子どもに質問をして、気持ちよく語ってもらいましょう。そうすれば、子どもは言葉を選びながら、大喜びで話してくれるんじゃないでしょうか。

最初にお話した「国語」をなぜ学ぶのか?ということにつながりますが、日常の出来事や世の中のことをどうやって言葉に変えられるかが、国語を勉強する真の目的なのだと思います。

ただ、語彙力や言葉力はもちろん身につけたほうがいいけれど、それがすべてではありません。言葉で伝えることが難しければ、映像で伝えればいい。野球で自分を表現したい子だっているし、漫画を描くことで気持ちを伝えられる子もいます。みんながみんな紫式部になれるわけじゃないですもんね。

それくらいおおらかな気持ちで、そして、親子で楽しみながら対話をしていれば、結果的に必要な語彙力が自然と身についてくると思いますよ。

 

取材・文/水谷 映美

金田一 秀穂(きんだいち ひでほ)さん

金田一 秀穂(きんだいち ひでほ)さん

金田一 秀穂(きんだいち ひでほ)さん

日本の言語学者。専門は日本語教育・言語行動・意味論。杏林大学外国語学部教授。『学研 現代新国語辞典』や『新レインボー 小学国語辞典』(ともに学研プラス)など辞典の編纂にも多く携わる他、『「汚い」日本語講座』(新潮社)、『ことばのことばっかし』(マガジンハウス)、『お食辞解』(清流出版)、『オツな日本語』(日本文芸社)、『金田一家、日本語百年のひみつ』(朝日新聞出版)など著書多数。

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