AI時代、うちの子は大丈夫?将来につながる家庭の「探究力」の育み方!

「AI時代、うちの子はこの先大丈夫なのだろうか?」——そんな不安を感じたことはありませんか。
知識の大切さは変わりません。でも、生成AIの登場によって「調べる」「まとめる」といった作業は、以前よりずっと簡単になりました。では、これからの時代に本当に必要な力とは何でしょうか。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授で、NPO法人CANVAS理事長を務める石戸奈々子先生は、「それが“探究力”です」と言います。石戸先生に「探究力」について教えていただきました。
「探究力」は答えがひとつでない場面でも向き合うための力
「探究力」とは「自分で問いを立て、試行錯誤して学び続ける力」のこと。
現代社会には、正解がひとつに決まらない問題があふれています。これまでのように、単に知識をたくさん持っているだけでは立ち行かない場面も少なくありません。AIが答えを提示してくれる時代だからこそ、「問題を発見する力」「試行錯誤する力」そして、周りの人と一緒に何かをつくりあげる「他者と協働する力」がより重要になります。文部科学省も小中学校の「総合的な学習の時間」などを通じて探究的な学びを育む教育の実践を促していますが、探究力は学校だけで育つものではありません。その芽は、実は家庭の中にもたくさん転がっているのです。

探究心は家庭から育つー今日からできる3つの習慣ー
「探究力」の出発点は「探究心」。探究心の原点は「なぜだろう」「すごい!」「はてな?」と感じるような、“何かにわくわくするような気持ち”です。特別な教材や難しい準備をしなくても、日常生活の中に探究のきっかけはたくさんあります。
① 子どもの「なぜ?」を止めない
例えば、スーパーに行ったとき、子どもが野菜を見て「同じ野菜なのに先月と値段がちがうのはなぜ?」と言うことがあります。また、動かなくなった時計を見て「どうして動かなくなったの? どうしたら直せるの?」と聞くようなこともあるでしょう。そうした子どもの「なぜ?」を大切にしてあげたいものです。
② すぐに答えず「どう思う?」と問い返す
大人はつい、正解を教えてあげたくなります。しかし、すぐに答えを教えるのではなく、「どう思う?」と問い返してみるのも一つの方法です。「どうしてか、一緒に考えてみようか?」「動かなくなった時計を直してみようか?」といった会話によって、自分からもっと知りたいという気持ちが生まれてくることがあります。もちろん、大人にもわからないことはあります。そのようなことを一緒に調べ、学ぶ姿勢を大人が見せるのもとても良いと思います。子どもは、大人との対話の中で、この世界をもっと知りたいという気持ちを広げていきます。そして、大人になっても学び続けることの大切さを自然に学んでいきます。
③ 親も一緒にワクワクする

料理をして、「これとこれを混ぜるとどうなるかな?」「電子レンジって、ボタンを押すだけでどうして食べ物が温まるのかな?」などと言いながら楽しんでみるのもいいですね。そして、家の外を“冒険の場”にしてみましょう。「ハートの形をした葉っぱを探そう」「この花と同じ色の花をほかにも探してみよう」など、ミッションを設定してみると、見慣れた風景も、わくわくするような“冒険の場”に変わります。大切なのは、親子で一緒に楽しむことです。子どもと一緒に面白がる存在でいられたらいいですね。
恐竜が好きな子もいれば、電車やゲームが好きな子もいます。好きなことをとことんつきつめていくことこそ、「探究」につながっていくのだと思います。保護者の方は、その好きを応援してあげるとよいのではないでしょうか。
「好きがない」子はいない!さまざまな出会いの場を
「うちの子は好きなことがないみたい」と言う保護者の方がいます。けれど、本当にそうでしょうか。何かに「へえ」と思う気持ちを持たない子どもはいないでしょう。ただ、それをうまく言葉にできないために、周りからは「好きなことがない」ように見えてしまうのかもしれません。壮大なテーマである必要はありません。構えすぎず、家の中や家の近所にあるものに目を向けてみるのもいいでしょう。
「好き」にまだ出会えていないだけなら、いろいろな体験ができる場所に親子で行ってみるのもおすすめです。初めて触れるものに子どもの表情が変わる瞬間に出会えるかもしれません。
探究は“学びのOS”、教科は“アプリ“ 対立ではなくどちらも大切
「探究学習も大切だけど、受験のことを考えると教科学習のほうが重要では?」と心配する方もいるようです。しかし、探究学習と教科学習は対立する関係にあるわけではありません。
あるテーマを探究するには、さまざまな知識が必要です。例えば、説明を読み解くための国語力、計算するための算数(数学)的素養、図工を通して育まれる感性などを総動員させて、調べ、新しい価値をつくります。これまでバラバラに学んできた知識を統合して活用する力が求められるのです。逆に、これまでなんのために学ぶかよくわからずにいた教科を学ぶ意味にも気づくことになります。探究学習と教科学習はどちらかが優先されるものではなく、互いに連携して相乗効果を生むものなのです。

探究は「学びのOS」にたとえられるかもしれません。探究学習は、「問いを立て、試し、振り返る」という循環で進みます。このような思考の働かせ方は、どんな教科・領域にも共通して必要で、大人は仕事の中でも日常生活の中でもこのようにしているはずです。
AIの発達によって、知識を暗記することの価値は相対的に下がっています。そこで、何を問うか、何を選ぶか、何をつくるかという人間ならではの力が重要になってきます。「学び方そのもの」を学ぶOSがぶれなければ、OSに乗るアプリやスキルが変わるたびにアップデートできます。探究学習はOSに、教科学習はアプリにたとえることができます。探究学習で育まれた探究力があるから教科学習が深まり、教科学習で身につけた知識・技術・感性があるから探究が広がります。両者はお互いに支え合う関係なのです。
デジタルもリアルもー両方を子どもの学びの味方にー
子どもが生成AIなどのテクノロジーを使うことに不安を感じる方もいるかもしれません。これまでも、新しいツールが登場するたびに、「子どもにはよくないのではないか?」「使わせないほうがよい」といった声が上がってきました。しかし、包丁や自動車のように、便利な道具でも誤った使い方をすれば問題が生じます。テレビもゲームもデジタル機器も、登場した当初は子どもによくないとされ、できるだけ触れさせないようにする動きがありましたが、いまでは教育の場でも活用されています。これからの子どもたちは、生成AIと共にある社会の中で生きていくことになります。そうであれば、使い方のリテラシーを学んだ上で利用できるようにするのが妥当でしょう。便利なテクノロジーは、積極的に利用したいものです。
「新しいツールは大人自身が使い方に自信がないため、子どもに使わせるのは不安だ」という声もあるようです。しかし、デジタルリテラシーは全ての人に必要な力です。また、社会が大きく変化するいま、生涯学び続ける力も大切です。大人も学ぶ姿勢を見せながら、子どもとともに学ぶのはたいへん意義のあることなのです。
実際、デジタル機器によって、従来高い本を買って調べなければならなかったことが瞬時にわかったり、世界中の多様な考えの人たちと簡単に話ができるようになったりと、デジタルな学びには便利な側面もあります。ここで「デジタルも大切だけど、リアルも大切では?」という疑問を持つ人がいるかもしれません。しかし、どちらの方がより重要というものではありません。AIが便利だから、なんでもAIに任せておけばよい、あるいは、子どもにはリアルな体験だけをさせたいというのは極端な考え方です。
「土に触れる」「誰かと会話する」「失敗して悔しいと思う」といったリアルな体験は好奇心を育みます。それを出発点として、デジタル機器によって調べたり、コミュニケーションを取ったり、作ったりといった組み合わせで、リアルな世界で芽生えた好奇心が広がっていくのです。どちらか一方ではなく、組み合わせていくことがこれからの学びです。子どもたちは、リアルとデジタルの両方を行き来しながら学んでいく世代なのです。
大人は子どもの“伴走者”でいればいい
未来を生きる子どもたちに、なぜ「探究力」が必要なのか、家庭で「探究力」を育むにはどうしたらよいか、少しはイメージしていただけたでしょうか。
「探究が大切だから、何か壮大なことをしなければならない」とか「大人が子どもを導かなければならない」などと、身構えることはありません。探究とは、子どもが自分の問いで世界と出会うことです。身近なテーマをみつけ、大人は子どもの“伴走者”として寄り添うのがよいと思います。子どもの好奇心を尊重し、ともに学んでいくことを大切にしたいものです。
「CANVAS 遊びと学びのヒミツ基地」活動レポート

石戸先生が理事長を務めるCANVASは、多様性を尊重しながら、子ども一人ひとりに応じた学びの場づくりを目指しています。異なる背景や多様な力を持つ子どもたちがコミュニケーションを通じて協働し、新たな価値を生み出すことができる場です。子どもたちが、主体的、協働的、創造的な学びを体験できるよう、多様なワークショップやイベントを開催するほか、身の回りの素材を使ったものからデジタルテクノロジーを活用したものまで300種類以上のプログラムを用意しています。
「ワークショップに参加する子どもの表情がパッと明るく変わる瞬間があります。その表情をよく観察することを大切にしています。子どもたちのアイデアは多様で、問題意識を持って解決しようという中で、私たちが驚くようなものをつくる子どももいます」(石戸先生)
子どもの未来を応援!「キッズみらいアワード」2026

子どもたちの学びや成長を支える“モノ・コト・ヒト”を顕彰する取り組みとして、キッズネットはこの春「キッズみらいアワード」をスタートしました。書籍・教材・デジタルサービス・体験スポット・生活や健康を支える商品、さらに子どもたちの手本となる人物など、多様な分野からノミネートを選出しました。※投票期間は終了いたしました。
選考では、教育関係者の視点に加え、小中学生や保護者の意見も重視し、ウェブ投票や体験イベントを通じて受賞を決定しました。また、石戸先生には審査員としてご参画いただきました!
「キッズみらいアワード」に選ばれた“モノ・コト・ヒト”は一体何でしょう? 結果発表をチェック!










