
AI時代において、英語学習の方法は大きく変わりつつあります。ChatGPTやGeminiをはじめとした生成AIの登場で、個人のレベルや興味に合わせた学習が、誰でも手軽にできるようになりました。しかし、「具体的にどう活用すればいいのか」といった疑問を持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。そこで、AIに詳しい英語学習コーチの谷口恵子さんに話を伺いました。会話の練習、リスニング、問題作成など、レベルや目的に合わせた使い方を、継続のコツや学習効果を高めるポイントと合わせてお伝えします。
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AIで小・中学生の英語学習はどう変わる? 活用法のコツとノウハウ(上)
AIで小・中学生の英語学習はどう変わる? 活用法のコツとノウハウ(下)
(たにぐち・けいこ)2002年東京大学法学部卒業。20年東大大学院学際情報学府修士課程修了。日本オラクル、ソニーなどを経て、13年に出版社を共同起業。英語学習コーチ・AI活用コーチとして、企業研修、Udemy等の講座を通じて、累計約15万人以上の学習者のサポートを行う。著書に『AI英語革命』『すごい英会話』(リチェンジ)、『自分のことを100ネタ話すためのAI英作文』(コスモピア)ほか多数。立教大学経営学部BLP講師も勤める。
なぜAIが英語学習に向いているのか
――AIが英語学習にいいというのは、どういう点にあるでしょうか。
ChatGPTなどの生成AIを使うと、自分のレベルに合わせた形で学習を進められるという点です。小学校や中学校から英語学習を始める場合は、初心者・初級者のレベルからのスタートですが、ある程度のレベルになってからではなく、最初からどんどんAIを活用することができます。
そのためには、AIに指示をする時に自分のレベルを具体的に伝えることが大切になります。例えば「私は中学1年生で、英語を学び始めたばかりです」「簡単な挨拶だけはできます」といった形で、自分の状況やレベルを伝えます。
その状態から「1年後に英検4級のレベルになりたいです」「簡単な英会話ができるようになりたいです」など、目標を伝えます。テスト勉強などで特定の文法項目を学びたい場合は、「仮定法を使いこなせるようになりたいです」「不定詞と動名詞の違いが分かるようになりたいです」といった文法項目も伝えることもできます。
自分がやりたいことをなるべく具体的に伝えて指示をすることが、効果的な学習につながります。レベルの全体的な引き上げか、テスト対策かなど、自分の目的に合わせて使えるのです。
――学習を続けやすくするためのポイントはありますか。
英語学習を飽きないようにする、続けやすくするための工夫です。自分が興味関心のあることにできるだけ引き付け、関係させて英語を学ぶと、やはり楽しく学べますし、続けやすくなります。
これは大人もそうですが、お子さんが学ぶ時も同様です。例えばアニメの「鬼滅の刃」が好きな子だったら、「私は『鬼滅の刃』のファンです。作品について英語で会話をしましょう。あなたは『鬼滅の刃』が好きなフランス人になりきってください」といった形でロールプレイをしてみることができます。
あるいは、「○○の映画を見た感想を話し合いましょう」など、自分が日本語でも話したいと思えるような好きなことをテーマに会話をしてみると、楽しく英語が話せます。自分が話したい内容なので、実際に話せるようになった時に使う機会がある可能性が高いものになります。
――好きなテーマについてなら、話すのも読むのも楽しいですね。読み物を作ってもらう場合は、どのように指示すればいいですか。
例えばサッカーについてなら、「〇〇チームの△△選手について、その選手がどうやって強くなったのか、200ワード程度の英文で書いてください」など、細かく指定して書いてもらうことができます。
興味を持って読むことができるので、知らない単語があった時にもモチベーションを持って、「どういう意味だろう」と調べることができます。本当に自分の好きなことに絡ませる、自分ごとにするということが継続のカギになってきます。
今までだと、市販の教材や教科書を使うとどうしても興味がないものになってしまいがちでしたが、自分の興味に沿って教材を作っていくことが手軽にできるようになったという点が、生成AI活用の大きなポイントです。
リスニング学習に最適な音声AIの活用法
――4技能(リーディング、ライティング、リスニング、スピーキング)のすべてでAIを活用できるでしょうか。
4技能すべてで使うことができますが、早い段階で英語に触れるのであれば、できるだけ音声を一緒に聞き始めた方がいいと思います。文字による学習から入ってしまうと、後々、発音に苦しむケースがあります。今の40代以降の方は、リスニングがあまり重要視されていなかった時代に学生時代を送っているので、聞き取れないし話せないという状態になった方が多いかと思います。
今の小学生、中学生も音をしっかり聞かないと、音と言葉が結びつけられないという状態になってしまいます。特に中学校になるとテストが厳しくなって、文字での勉強に集中しがちなので、できるだけ早いうちから音に慣れるということが重要ですね。
小学生のうちはできるだけ音にたくさん触れつつ、文字は音が分かった後の答え合わせとして、後から「これでアップルって読むのね」「これでオレンジなのね」というように、音が先に分かっていて、後からスペリングがついてくるという順番がいいと思います。
中学生以降になると書いたり読んだりも増えると思いますが、その時もできるだけ音を一緒に聞くようにして、音とスペリングと意味がきちんと結びついた状態で単語をたくさん覚えていくことを目指してほしいと思います。
――リスニングのトレーニングをする時は、ChatGPTだけで十分ですか。
私がおすすめしているのは、リスニングではテキストをChatGPTなどの生成AIで作って、音を聞く時は別の音声AIと呼ばれるものを使う方法です。
ChatGPTにも音声読み上げ機能があるのですが、それを使うと文章の最初から最後まで読んでしまいます。NaturalReaderやElevenLabsといった別の音声AIを使うと、何回も同じものを聞き直す、聞き取りたい部分だけをここから再生する、という形で使うことができます。
こうした音声AIはいろいろなスピーカーを選ぶことができるので、例えばインド英語、イギリス英語、オーストラリア英語など、さまざまな英語を練習するのに使えます。高校生ぐらいで短期留学に行く方もいると思いますが、行く前にオーストラリア英語を練習しておこうとか、そういった学びもできますね。
あと、スピードが変えられるので、ちょっと速すぎる時は0.8倍速などゆっくりに調整して、まずは聞いてみる。慣れてきたらだんだんスピードを上げて元に戻すということもできます。NaturalReader、ElevenLabsもある程度まで無料版でも使うことができます。アプリ版もあり、スマホでも使えるので便利です。
ChatGPTの音声会話機能で英会話練習
――音声で会話を練習する時は、どのようにすればいいでしょうか。
ChatGPTの場合なら音声モードを使います。指示を入れる欄の一番右端に「音声モードを使用する」ボタンがあります。今は音声会話中、話している内容が文字で出るようになっているので、すごく初心者向けに使いやすくなりました。
実際に使ってみると、以下のように活用できます。

読み上げが速い場合、日本語で「もう少しゆっくり話して」とお願いすると、「Of course, I can definitely slow it down a bit for you. No rush at all.」などと、ゆっくり話してくれます。「Can you suggest some topics to talk?」と聞けば、トピックを提案してくれます。
――ChatGPTとGemini、どちらが英語学習に適しているでしょうか。
今のところ、音声会話を進める上ではChatGPTの方が、使い勝手がいいと思います。Geminiは英語と日本語の話しの切り替えの点で少し混乱することがあります。英語で話しつつ、途中で質問を日本語に切り替え、日本語で意味を解説してもらった後にまた英会話に戻りましょう、といったやり方はChatGPTの方がスムーズにやりやすいです。
長文を英語で作ってもらう、テスト問題をたくさん作ってもらう、という使い方ではGeminiもChatGPTも変わらないぐらいになってきているので、音声での会話をしないのであれば、Geminiでもいいと思います。ただ、英語は音声が大事なので、できるだけ英会話をたくさんするなら、今のところはChatGPTをおすすめしています。
学習段階別のAI活用法
――小学生、中学生、高校生、それぞれの段階でどのようにAIを活用すればいいでしょうか。
小学生の場合は、できるだけ音にたくさん触れることが重要です。音楽、映画、ドラマ、アニメなどで英語をたくさん聞く。聞き流し状態から始めて、そこから好きなものが見つかったら、それについてChatGPTと簡単な会話をしてみるというのがいいでしょう。
ただ、日本語の発達が早い子で、「わからないものはイヤ」というような状態になった場合は工夫が必要です。無理にChatGPTと毎日1分の英会話をしようとすると、それ自体が苦痛になるかもしれません。楽しさを重視する児童英語のスクールを活用してみたり、ゲームやカードを使うなどしてお家で楽しく英語に触れてみたりしながら、少しだけChatGPTとも会話をするくらいから始めましょう。
小3から英語活動が始まり、教科書などで英語を目にする機会は出てきています。例えば果物の名前が出てきたら「あと10個挙げてみて」といったAI活用法から始めていくのもいいでしょう。お家などで知っている単語が少しずつ増えていくと、授業の中で「聞いたことがある」「分かる」と感じる場面が増えていきます。そうした小さな成功体験の積み重ねが、「自分にもできる」という自信につながり、「英語って楽しい」という前向きな気持ちを育ててくれます。
中学生以降になると定期テストがあるので、その範囲を伝え、単元を深く理解しつつ楽しく英語に触れられるような長文を作ってもらうといいでしょう。例えば「関係代名詞と仮定法をなるべく多く使って200ワードの長文を作ってください。笑えるストーリーにしてください」といった形で、楽しめるような長文を作ってもらうことができます。範囲が決められているので、大人よりも使いやすい面があります。
ほかにも、教科書の中で自分が苦手だなと思うところの写真を撮ってアップして、「ここが得意になるようにしたいです。似たような例文をたくさん作ってください」といった形で指示もできます。そして、「私が理解できているかをチェックするためのテストを出してください」と言ってテスト問題を出してもらうこともできます。
自分の苦手なところだけ問題をたくさん作ってもらうのも、ChatGPTだとやりやすいです。「穴埋め問題にしてください」「並び替え問題にしてください」といった形で、問題をたくさん作ってもらって練習をするのもおすすめです。
あとは自分で英作文を書いてみて、「この英文は正しいですか」という風に聞いてみると、理解が深まります。本当に自分専用家庭教師みたいな感じで使えます。










