これからは授業を受けるのが宿題になる!?/知っておきたい教育用語のトリセツ【第4回】
以前このコーナーで紹介した21世紀型能力をはぐくむために、学校では新しい学習方法が導入され始めています。特に生徒が能動的に学ぶ力を育てるために、アクティブ・ラーニングと並んで注目されている反転授業について、今回の「知っておきたい教育用語のトリセツ」第4回目で解説します。
授業と宿題の役割を反転した授業形態。家庭で、予習として授業を受講し、学校ではその内容がどれだけ理解できたかの確認や演習、学習内容にかかわる意見交換などを行ないます。
授業はビデオで受けるものになるの?
これまでは、学校では教科書を使って先生が授業を行ない、習った内容を身につけるために復習として宿題が出て、家でさらに勉強するというスタイルが一般的でした。しかし、その授業スタイルも今後大きく変わる可能性があります。
その一つのかたちが反転授業です。家庭での予習として、講義ビデオなどのデジタル教材を使って学び、教室では先生が授業するのではなく、予習で学んだことがどれだけ理解できたかの確認や、学んだ内容について深めるためのディスカッションなどを行ないます。
つまり、授業と宿題の役割を反転させているのです。
学校は学んだことを深める場所に
これまでも「予習をしなさい」という宿題はあったと思いますが、ICT技術が進歩したことで、講義ビデオの作成やネットを介した配布が容易になり、家庭でも簡単に授業を受けることが可能になりました。
小学校の授業はたいてい1コマ45分ですが、その中で、新しい知識を与えてそれを理解させ、身につけるところまで持っていくには相当時間がかかり、1コマに収まりきらないこともあります。
しかし、子どもたちがあらかじめ授業内容をビデオで見てから授業を受ければ、先生は一から解説する必要がないので、内容が理解できたかどうかの確認や、定着させるための演習、さらに深めるための学習に時間をあてることができます。
子どもたちからは、効果ありの声
アメリカで始まったこの授業スタイルが日本に導入されたのは2012年頃から。
最近は、佐賀県武雄市が市内の全小中学校の一部の教科で反転授業を取り入れ、その効果が注目されています。
国内で、いち早く小学校の授業に導入した事例として、宮城県富谷町立東向陽台小学校(当時)の佐藤靖泰(さとう やすひろ)先生の反転授業への取り組みをまとめた動画も公開されています。
授業を受けた子どもたちからは、
- 家で予習してきたことを使って授業で話すので、自分の考えを見直せる。
- 家で明日の勉強ができ、次の日は必ず分かるので楽だった。
- みんなが自分の考えを持って意見を出し合うので、まとめるのに達成感があった。
- 家で何度も見て理解でき、話し合いについていけるので良かった。
というような感想があったそうです。
実際にこの授業の効果を図った結果、成績上位の生徒はもちろんのこと、成績下位の生徒も学校でみんなといっしょにディスカッションしたりして学び合うことで成績があがったそうです。学習効果があがっているようですね。
全国に広がるには課題も
一方で課題もあります。大きくは次の3つ。
- 費用負担も含めてタブレット型端末やネット環境を全家庭に備えることができるか
- 特に小学校低学年では、自宅で自習するためには、家庭のサポートが必要
- ビデオ教材の作成や、先生のICTおよび授業運営スキルの向上が必要
しかし、国も2020年までに全学校で21世紀にふさわしい学びを実現することを目標に改革をすすめるとしています。これらの3つの課題の解決とともに遅かれ早かれ反転授業は全国に広がっていくことでしょう。
学校の役割も変わっていくの?
これまでは、知識を与えることが学校の役割でしたが、今ではネットで知識や情報を得ることが簡単になったため、情報収集の仕方や、その使い方、学び方を教えることが必要になっていきます。
また、21世紀型能力の解説にもあるように、これからは身につけた知識や技術をもとにしながら自分で考え行動する力を育てることが求められています。反転授業は、子どもたちが自ら学ぶ力を伸ばす取り組みの一つといえるでしょう。
反転授業のポイント
- あらかじめ自宅で講義のビデオを見て予習をし、学校では、話し合いや演習、課題学習などを充実させる授業スタイル。
- 21世紀型能力をはぐくむための、新しい学び方の一つ。
参照
関連リンク/知っておきたい教育用語のトリセツ
【第1回】2020年の大学入試制度改革、小中学校にも大影響
【第2回】21世紀型能力は、これからの時代を生き抜くための必須アイテム!?
【第3回】これからは授業を受けるのが宿題になる!?
【第5回】PISA型学力ってなに?