世界一子どもがしあわせな国の子どもをしあわせにする教育とは?
みなさんは、「オランダはどんな国?」と聞かれたら、何と答えますか。チューリップ、自転車大国、干拓、風車…。のどかな田園風景の中に広がる色鮮やかな花のじゅうたんが目に浮かぶことでしょう。
1人当たりGDPがOECD加盟国中9位(日本は20位)と高い生産性を誇るオランダは「子どもの幸福度が高い国」としても知られています*1。世界一子どもがしあわせな国の学校教育とはどんなものなのかを探るため、2014年9月、未来教育会議オランダ教育視察ツアーに参加し、小学校、中学校・高校(中高一貫校)を視察しました。ハピネス大国オランダの教育を徹底レポートします。
*1 国連児童基金(ユニセフ)と国立社会保障・人口問題研究所は2013年12月、『先進国における子どもの幸福度―日本との比較 特別編集版』を発表しました。それによると、第1位はオランダです。日本の子どもの幸福度は、総合順位で先進31カ国中6位。
こんなに日本とちがう! 自由度が高いオランダの教育システム
視察で何より驚いたのは、オランダの教育の自由度の高さ。子どもたちが、自分が得意なこと、学びたいことに集中して取り組める仕組みが整っています。オランダの教育の特徴をまとめると、以下の通りです。
- 学費、教材は無償
- オランダでは、学費は無償です。日本のような検定教科書はありませんが、教材も無償で提供されます。
- 学年ごとの学習指導要領がない
- 日本のように学年ごとの学習指導要領がありません。小学校では、小学校を卒業するまでに、一定の学力が得られればいいという原則に基づいて教育しています。
- だれでも学校を作ることができる
- 自己資金がなくても、入学する児童・生徒がいるという見込みがあり、「学校を設立するための要件」を満たしていれば、政府が建物と運用資金を支援してくれます。学校の設立・運営を支援してくれる団体もあり、だれでも宗教、思想、教育理念に基づいて学校を設立することができます。
- 教育理念で学校を選ぶ
- 保護者や子どもは、教育理念に合った学校を選びます。教師も、自分の教育理念と学校の教育理念が合うかどうかを判断して、勤務する学校を選びます。
オランダでは子どもたちは、自分が得意なこと、学びたいことに集中して取り組みます。進ちょく度が高い子どもたちは、自分の興味関心を深め、受けたい授業を選びます。逆に、進ちょく度が遅れている児童に対して、教師は児童がわかるようになるまで、徹底的に指導します。このように、落ちこぼれを生み出さない仕組みがとられています。
教育のベースは民主主義。子どもの将来に役立つ教育が進められている
オランダでは、勝ち取った民主主義を守っていくことを徹底して教育しています。社会には多様な価値観があり、どのように共存していくかが民主主義にとって必要なスキルであると考えられています。
とくに、オランダは中東やアフリカなどからの移民を多く受け入れており、多民族との共生は、社会全体の大きな課題です。
また、21世紀型スキル※2をはじめ、子どもの将来に役立つ教育が進められています。そのひとつとして、ICT教育に焦点をあてた「スティーブ・ジョブズ・スクール」が急成長しています。創立者のMaurice de Hond氏が、娘のために将来必要なスキルを今学ばせたいと願って作りました。スティーブ・ジョブズ・スクールについては、次回詳しく報告します。
*2 21世紀型スキル
21世紀型スキルに関する教育評価基準を策定している国際団体「ATC21S (Assessment & Teaching of 21st Century Skills)」は、21世紀型スキルを次のように定めています。
- <思考の方法 Ways of thinking>
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- 創造性と革新性
- 批判的思考、問題解決、意思決定
- 学習能力、メタ認知
- <仕事の方法 Ways of working>
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- コミュニケーション
- コラボレーション(チームワーク)
- <学習ツールの活用 Working>
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- 情報リテラシー
- 情報コミュニケーション(ICT)リテラシー
- <社会生活 Living in the world>
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- シチズンシップ(地域および世界)
- 人生とキャリア
- 個人的責任と社会的責任