幼児だけじゃない、本当のモンテッソーリ教育
人が生きるために必要なものはほとんどそろっている時代。物質的な豊かさの中に生きる子どもたちが身につけなければならないものは、与えられた問いの正解を見つけるちからではなく、自ら考え、創造するちからです。
自由な創造性、主体性を育てていく「モンテッソーリ教育」は欧米を中心に世界各国で広く実践されています。
イタリア初の女性医師、マリア・モンテッソーリが今から約100年前に考案し、確立させた教育法です。医師であり、科学者であったモンテッソーリは、それまで精神論的な側面の強かった教育の世界に、初めて科学の視点を取り入れた人として知られています。
モンテッソーリ教育って何?
大切にしているのは「自律」と「集中」。自分の意思で選んだ活動に集中することです。知識を伝達することが主体であった従来の学校と一線を画す、子どもの意欲を重視した学びは、まさに今教育界で注目されている「アクティブ・ラーニング」そのものであると言えます。モンテッソーリ教育は時代を先取り、100年も前から実践していたわけです。
海外では高校・大学でも実践されているモンテッソーリ教育ですが、日本では幼稚園までしか認可されていないため小学生以上の学びの場で生かされることはありません。
小学校の学習に活きる活動や教具がこんなにもたくさんあるのに、なんてもったいない!
これから、小学生のお子さんがいるご家庭で取り入れることができるモンテッソーリ教育のメソッドをご紹介していきます。
具体物(教具)を使った、たし算、ひき算、かけ算(+、-、×)
小1~2の子どもたちに人気なのが「銀行あそび」という活動です。
モンテッソーリ教具「金ビーズ」を使います。これは、幼児の段階から千の位までの数を数えられることを目的とした十進法の教具です。ビーズ1個を数字の「1」とし、ビーズ10個を通した棒1本を「10」、その10個を通した棒を横に10本並べて正方形の板にしたものを「100」、さらにそれを10枚重ねた立方体が「1,000」を表します。ビーズの数が多くなること、位が上がるごとに形が変わることで、感覚的に数の大小をとらえることができます。「1」の金ビーズが10個集まったら、棒状の「10」の金ビーズ1本に交換(両替え)することで、繰り上がりを具体的な動作で体験することができるので、「銀行あそび」という名前がついています。
1~20までの数字の目がある20面体サイコロ2つと (+、-、×)のサイコロ1つを組み合わせ、出た目を計算して金ビーズを増やすゲームをします。制限時間内にどれだけたくさんの預金ができたかを競うゲームです。
金ビーズという具体的なものの操作をすることで概念の理解につながり、対抗戦にすることで夢中になって遊んでいるうちに計算の基礎を身につけていきます。
家庭での実践
具体物によって数の大小を感覚的にとらえるのに有効な家庭での取り組みは「アイロンビーズ」です。ビーズを10個、縦に並べてアイロンをかけると「10」の棒ができます。「100」は10×10の正方形、「1000」は10×10×10の立方体です。「10」の棒は10本以上、「100」の正方形は10枚以上作っておくと、繰り上がりの交換(両替え)が体験できます。お子さんと一緒に作ると、自然と1000までの数を数えることができます!
具体物を操作をしながら計算練習ができる教具には、ほかに「切手あそび」というものがありますが、それはまた別の機会にご紹介します!
モンテッソーリ教育の学習のステップ
モンテッソーリ教育では、学習のステップは常に「具体的なもの」から「抽象的なもの」に置き換えるという流れですすみます。「銀行あそび」では、計算を繰り返すことでお金=金ビーズがたまり「量が増えていくという感覚」、両替えをすることで「位取りの感覚」を体験することができます。
それによって子どもは抽象的で無機質に見える数の世界が、目に見える形となって現れることを知ります。その経験は、数に対する興味や関心をかきたてていきます。
モンテッソーリ教育の活動は、抽象的なものは、具体的な形を伴ったイメージに紐付けることができるということを子どもに教えてくれるのです。