最も身近な野生の生き物、野鳥のヒナを拾わないで!
春になり、鳥の鳴き声に穏やかさを感じ始めるころ、日本野鳥の会には、こんな電話が来るそうです。「野鳥のヒナを拾ったけれど、どうしたら良いですか?」
春になり、鳥の鳴き声に穏やかさを感じ始めるころ、日本野鳥の会には、こんな電話が来るそうです。
「野鳥のヒナを拾ったけれど、どうしたら良いですか?」
なんと、多い時で月に200件も!
問い合わせのうち、拾わなくてよかったケースがとても多いそうです。
人間がヒナを拾って連れ帰ってしまうと、ヒナと親鳥を引き離すことになり、ヒナを死なせてしまうという悲しい結果になることも…。
そうならないために、道などでヒナを見かけた場合の対処法を、日本野鳥の会の江面康子(えづらやすこ)さんに教えてもらいました。
街の中にも野鳥っているの?
メジロやツバメ、スズメなど、わたしたちが生活している環境に巣作りをしている野鳥は何種類もいます。
ハトやムクドリ、ヒヨドリは茂みのある場所に。スズメは、瓦屋根のすきまや家のすきまに巣を作ることが多いのですが、最近は日本家屋が減っていて、さらに家の機密性が高まっているため、巣を作る場所がなくなってきていると言われています。そのため、電線の分電盤やブロック塀のすきまなどに巣を作り、子育てをすることもあります。
野鳥の天敵がやって来にくいため、スズメやツバメなどは、人が暮らしている場所の近くに好んで巣を作ります。ツバメは、わざと人の出入りが多い玄関先や駅に巣を作ったりします。
このように、街中に巣を作って子育てをする野鳥は多いので、子育ての時期になると、ヒナが地面にいる場面に遭遇することはけっこうあるんです。
日本野鳥の会のあるビル(東京都品川区)の近くでも、シジュウカラが子育てをしています。
春から初夏が野鳥の子育てシーズン
多くの野鳥は、春から7月ぐらいにかけて子育てすることが多いので、まさにこれからが子育てシーズン。
また、そろそろツバメが渡ってくるころなので、街中にツバメを見かけることもあるでしょう。
野鳥は、卵を生み、卵を温めてヒナをかえします。その後、巣の中でエサを与えて成長させ、およそ2週間ほどで巣から出ていきます(巣立ち)。
もし、あなたが地面にいるヒナに出会ってしまった場合、この、巣の中にいる「巣立ち前のヒナ」と、巣から出たあとの「巣立ち後のヒナ」で対応が変わりますので、どちらか見極めることが重要です。
この状態を覚えておきましょう。
では、いよいよ地面などでヒナを見かけたときの対処法です。
野鳥のヒナを見かけたら
まずヒナの外見から、巣立ち前のヒナか、巣立ち後のヒナかを見極めてから行動しましょう。
巣立ち前のヒナ
巣から落ちてしまった可能性が高いので、巣がどこにあるかわかっている場合は巣に戻してあげましょう。
人間が触れてしまった後でも、親鳥は今までどおり子育てを続けます。
巣の位置がわからず、ヒナを戻せない場合でも慌てることはありません。親鳥はきっと近くにいます。
もうすぐ巣立ちという時期の場合は、落ちたその場で親鳥がエサを与えていることもあるので、すぐには拾わずに見守りましょう。
巣立ち後のヒナ
元気な場合
拾わずそのままにしておきましょう。
野鳥のヒナはある程度大きくなると、巣を出て親や兄弟といっしょに行動しながらエサのとり方や飛び方を学んでいきます。巣立ってからおよそ2週間ぐらいが実地訓練の期間です。その期間にうまく飛べなかったりすると地面に落ちてしまうことがあるのです。
そういうときでも、必ず近くに親鳥がいます。かわいそうと思って人間が拾ってしまうと、親鳥と引き離す結果になります。また、野鳥のヒナを育てるのはとても難しいのです。エサを一日に何度も与えないといけない場合もあります。
ネコやカラスが近くにいる場合
茂みの中に入れるか、少し高い木の枝にのせてあげましょう。
親鳥から見えなくなっても、声が聞こえれば親鳥はヒナをさがせるので問題ありません。
けがしたり弱っている場合
各都道府県の鳥獣保護担当部署、たとえば市役所や区役所に電話して指示を仰ぎましょう。
市町村によっては、連携している動物園や動物病院、ボランティアをしているところを教えてくれることもあります。
もしもヒナを運ぶことになったら、段ボールなどの箱を使いましょう。箱に空気穴をあけ、お湯を入れたペットボトルを入れてあたため、ふたを閉めて暗くしてあげます。鳥は人間よりも体温が高いのです。
野鳥に触ったあとは、せっけんで手を洗いましょう。手袋をして触っても良いですね。
野鳥を拾ってしまった場合
拾ってから数時間後ならば、拾った場所に戻しましょう。もしも、夜に拾った場合であれば、翌朝でも問題ありません。
野鳥とのつきあい方
野生の生き物は野生の中で生きていくのが基本です。そこに人間が関わることは、できるだけ避けたいものです。野生生物の生活を尊重し、自然は自然のままにしておきましょう。
野生の生き物の中で、人間の一番身近にいるのが野鳥です。子どもたちが出会う機会も多いでしょう。野鳥とのつきあい方を身につけることで、野生の生き物とのつきあい方も身につけていってほしいですね。
日本野鳥の会『野鳥の子そだて応援キャンペーン』
ホームページ:http://www.wbsj.org/activity/spread-and-education/hina-can/
ポスター『みまもって、野鳥の子育て』
パンフレット『野鳥のヒナと出会ったら?』
などをダウンロードできます。