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【特集】STOP 小学生の視力低下③ 近視と遠視の違い・眼科受診のタイミングって?

【特集】STOP 小学生の視力低下③ 近視と遠視の違い・眼科受診のタイミングって?

タブレット学習やスマートフォン、ゲームなどの普及により、お子さんの視力低下を気にしている保護者は多いもの。事実、「コロナ禍で子どもの近視が進んでいます」と、みさき眼科クリニックの石岡みさき先生は警鐘を鳴らします。そこで今回は、子どもの視力低下のサインと眼科受診のタイミングについて、詳しく教えてもらいました。

おうちで気づける「近視のサイン」とは

視力低下はゆるやかに進むイメージなので、自分では気づきにくいのではないでしょうか。子どもの視力低下に親が気づくためのサインなどはありますか。

 

「小さなお子さんを連れていらっしゃる親御さんを見ていると、幼稚園や保育園、小学校の視力検査で引っかかったという場合はもちろんですが、家の中の子どもの様子を見ていて、心配になり受診されるケースも少なくありません。

 

たとえば、やたらとテレビに近寄って見ている、『あそこに○○があるね』と話しても、どこにあるのかわからない、といったケースが多いですね」(石岡先生)

 

その他、物を見るときに目を細める、よく目をこする、やたらと転ぶといったことも、視力低下の可能性があるようです。

未就学児で注意すべきは、近視よりも遠視⁉

さらに、石岡先生によると、未就学児の場合、注意すべきは近視よりも遠視なのだそう!

 

「近視の人は、眼球の網膜、つまりカメラで言うフィルム部分の手前でピントを結んでしまいます。遠くが見えずに近くはしっかり見えている状態ですね。一方、遠視は網膜の後ろでピントを結ぶ状態。ですので、遠く見るときは調節があまり必要ありませんが、近くを見るときは必要以上にピントを合わせて調節しなくてはいけません。

 

ただ、子どもの場合はピント合わせをする力がとても強いので、遠くも近くもしっかり見えます。そのため、視力が良いと判定されてしまい、遠視に気づきにくいのが盲点です。強いて言えば、集中力がないと言われているお子さんは、遠視の可能性があります」(石岡先生)

 

遠視になると、どんな困ったことがあるのでしょうか。両方見えているならば、問題ないような気がしますが……。

 

「遠視の子どもは、常にピントを合わせようと緊張状態が続くため、細かい作業を長く続けられなかったり、疲れやすかったりする傾向が見られます。また、強度の遠視の場合、常にぼやけた状態なので網膜への刺激が足りず、視力が十分に発達しません

 

私たちの視力の成長は、じつは10歳頃が最終ゴールなんですよ。ただ、6歳頃にはほぼ成長が終わっていて、大人と同じくらいの視力を持つ状態になります。そのため、6歳頃に左右が同じように見えていないと、大人になってもメガネやコンタクトレンズを用いても視力が矯正できない弱視になってしまいます」(石岡先生)

 

眼科デビューは4歳前後で

近視の場合は、物が見えにくくなるため気づくことができますが、反対になかなか気づきにくいのが遠視。パーセンテージとしては少ないものの、大人になってから治療ができないのがネックなのですね。

 

「遠視は見かけ上『物が見えている』状態なので、普段一緒に暮らしているご家族の方でも発見できないことが多いんです。では、3歳児健診などはどうかと言うと、眼科が健診を行うケースが少ないため、ここでも遠視に気づくことは難しい。

 

ですから、私たち眼科医は『4歳前後になったら、何もなくても眼科に来てね』とお伝えしています。小学校入学後だと少し遅いことがありますので。弱視は、早めに発見できれば治療ができます。ぜひ、眼科デビューは4歳で、と覚えておいてほしいですね」(石岡さん)

 

そのほか、学研キッズネットで視力に関する疑問や心配事を募集したところ、斜視に関して気にされている親御さんもいらっしゃいました。

 

斜視も、眼科に来てさえもらえれば気づけます。私たちは診察室に入ってきた瞬間から目の位置をチェックしていますので、特別な検査は必要ありません。

 

ただし、時々視線が外れる間欠性外斜視の場合には、受診するときに症状が出ているとは限りませんので、斜視の症状が出ているときにスマートフォンなどで写真を撮っておいてもらえると、すごくわかりやすいです。『目の位置がおかしいな』と思ったら写真に残しておくと、診察の際にスムーズです」(石岡先生)

 

眼科は小児科に比べると、なかなか訪れる機会が少ないかもしれません。けれど、子どもの視力に関しては、早期発見・早期治療が要です。少しでも気になることがあれば、ぜひ眼科を受診しましょう。そして、4歳になったら眼科デビューを。小さなお子さんがいらっしゃる方は、ぜひ意識しておいてくださいね。

 

(取材・文 水谷映美)

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お話を聞いた人:石岡みさき

お話を聞いた人:石岡みさき

お話を聞いた人:石岡みさき

みさき眼科クリニック院長。眼科専門医・医学博士。横浜市立大学医学部卒業。日本医師会会員、日本眼科医会会員、日本角膜学会会員。大学卒業後、同大学病院にて二年間研修ののち、眼科大学院にてぶどう膜炎について学ぶ。その後、アメリカ、ハーバード大学に留学し、眼の免疫の研究に従事。帰国後、角膜、前眼部疾患について学ぶ。平成20年、現在のクリニックを開業。

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