子どもを事故から守る「自転車の選び方」見落としがちな3つのポイント【知らないとマズイ自転車の心得②】
子どもたちの移動手段として身近な自転車。特に、成長が目まぐるしい小学生のあいだは、購入やサイズアップを検討する家庭も多いのではないでしょうか。
サイズ選びのほか、デザインや付属品なども気になりますが、最も重要なのは、「自転車の安全性についてしっかり考えること」だと、自転車の安全利用促進委員会の遠藤まさ子さんは指摘します。
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「知らないとマズイ自転車の心得①」はこちら
「交通事故」のリスクが高まる自転車選びの落とし穴
「皆さん、自転車の購入を考えるとき、かごの有無やデザイン等を気にされる方が多いので、自転車の安全性について優先順位が低くなりがちです。
自転車事故を防ぐためには、交通ルールを守ることは大前提。とはいえ、特に子どもの自転車においては、選び方によっては事故のリスクが高まるケースもあるんですよ。
たとえば、足が地面につかない場合は、停止するときにバランスを崩して転びやすくなってしまいます。また、ハンドルの位置が遠すぎると、操作性が悪くなるので大変危険です」(遠藤さん)
子どもの「自転車の選び方」確認したい3つのポイント
では、子どもたちが安全に自転車に乗るために、具体的にどのようなポイントを押さえておくとよいのでしょうか。
①ハンドルの位置
「自転車のサドルにまたがったときに、お子さんの足が地面にしっかりつくことはもちろん、意外と見落としがちなのは、ハンドルを握ったときの手の状態です。
先ほど冒頭でも触れましたが、腕を伸ばし切ったギリギリの状態では、車や人などをとっさによける必要があるとき、ハンドルを切ることができません。タイミングが遅れるだけでも大きな事故につながる恐れもあります。
サドルの高さは調整ができても、ハンドルまでの距離はお子さんが成長されるまで変えられない自転車がほとんど。ここはぜひ、選ぶときに注意していただきたいポイントです」(遠藤さん)
最近は、キックバイクから、補助輪なしの自転車に移行する子どもたちが多いそう。その場合は、足全体が地面にしっかりつくサイズにすると、安全かつ乗りやすいと話します。
「自転車によって適応身長はさまざまですから、一概に『身長何センチだと何インチ』といった目安で、言い切れなくなってきています。
いちばんいいのは、実際にお店で試乗をすること。マウンテンバイクのような形状は、後ろに足を上げてまたぐ必要があるので、そのあたりも確認しておくと失敗が少なくなると思います」(遠藤さん)
② ブレーキレバーの調整
「2つ目にお伝えしたいのは、自転車を停止するときに欠かせないブレーキレバーです。実は、ブレーキレバーの握り幅や固さは、調整できるというのをご存じでしょうか?
一般的に、これらは自転車整備士や自転車技士という資格を持った専門スタッフに、調整してもらえます。
しかしながら、最近ではインターネットで自転車を買うという方も増えてきていて、出荷状態のまま自転車に乗っている方を意外と多く見受けます。
レバーの握り幅が広すぎたり、固すぎたりしても、子どもたちはしっかり握ることができません。
購入時に調整するのがベストですが、お子さんの安全のためにも一度、資格を持つスタッフがいる自転車屋さんで見てもらうのがおすすめです」(遠藤さん)
③安全性を保証するBAAマーク
ほかにも、自転車の安全性を保証するBAAマークの有無も選択肢の中に入れてほしいと遠藤さん。BAAマークとは、一般社団法人自転車協会が定める自転車の安全基準が満たされていることを示すものです。
「一般社団法人自転車協会が定めるチェック項目は、なんと約90項目。たとえば、ブレーキの制動力についても、雨の日でもしっかり作動するかといった厳しい基準が設けられています。
ほかにも、フレームが丈夫で壊れにくいという点や、ライトの明るさ、リフレクターの反射具合なども、細かく検査しています。あとはSDGsですね。環境問題にも配慮しているという項目もあるんですよ。
最近は、子ども向けの自転車にもBAAマークが貼られているものが増えつつあるので、ぜひ確認してみてください」(遠藤さん)
買い替えのタイミングは「ペダルの漕ぎにくさ」を目安に
また、小学校高学年の子どもがいる家庭では、自転車のサイズアップのタイミングが気になるという声も多く聞こえてきます。遠藤さんによると、ペダルの漕ぎにくさがひとつの目安になるそう。
「サドルを上限のラインまでめいっぱい上げても、足が曲がりすぎるようであれば、買い替えを検討するタイミング。お子さんに直接、漕ぎにくくないかどうかを聞いてみるのもいいと思います。
一般的に、自転車のタイヤが大きくなるにつれて、ペダルの力をギアに伝えるクランクというパーツも長くなります。クランクの長さはペダルが描く円の大きさにも関わるため、背が高くなってくると、長い方が圧倒的に漕ぎやすくなるんですよ。
ただ、そこまで自転車が小さすぎるようでなければ、買い替えのタイミングは中学校入学後のライフスタイルに合わせて選ぶのがいいかもしれません。
自転車通学や習い事の移動手段に使うのかによって走行距離は変わります。毎日2~3キロの走行でも、積み重なると相当な距離になるもの。用途に合わせて耐久性なども、しっかり検討していただきたいと思います」(遠藤さん)
子どもたちにとって自転車は、自分で運転する身近な乗り物であると同時に、世界を広げてくれる移動手段。
自転車事故を防ぐためにも、安全に乗ることができるという視点で選ぶことを忘れないようにしたいですね。
取材・文/石橋沙織