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思春期・不登校のお子さんを持つ保護者の方必見! 知っておきたい“2つのこと”【コソダテのヒント】

思春期・不登校のお子さんを持つ保護者の方必見! 知っておきたい“2つのこと”【コソダテのヒント】

元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。

親が見落としてしまいがちなこと

思春期のお子さんへの対応で、気をつけてほしい“2つのこと”について話したいと思います。

以前、私が所属するはなまる子育てカレッジで「不登校」をテーマにした講演会を行い、教育ジャーナリストの太田敏正さん、不登校のお子さんなどの学習支援をしているビーンズの塾長・長澤啓さん、はまる子育てカレッジ代表・高濱正伸で座談会をしました。

塾で勉強している高校生くらいの男女

ビーンズには、いわゆる思春期と言われる時期、小学校高学年ぐらいから高校3年生までのお子さんが通っています。1~2年と不登校が長いお子さんでも、学校に復学して高校や大学に通われるまでを丁寧に支援・指導されている塾です。

多くの先生が所属しているので、大切にしていることを「ビーンズメソッド」という形で50万字ほどの方法論にまとめ、それを身につけて生徒さんたちと向き合っているそうです。

その中に、私の心に残った、「親が見落としてしまいがちな大切なこと」が2つあったのです。

《その1》友だちとの“だらだらおしゃべり”は大切な時間

ひとつ目は、「ゆるい青春」です。

小学校高学年ぐらいから始まるかと思いますが、よく学校や部活の帰り道、友だちとずっとおしゃべりをしながら帰ったり、そのあとも、どこかでだらだら話し込んだり、ということがありますよね。親御さんご自身も経験があるかと思います。

楽しそうに話している様子の制服を着た2人の女の子

それが親の立場になると、無駄な時間に感じて、「早く帰ってきて宿題や勉強をしてほしい」、「やることを済ませて、健康のために早く寝てほしいな」などと思ってしまいます。私もそうでしたし、私自身も親から同じように言われた覚えがあります。

けれどビーンズの長澤さんがおっしゃるには、青春の1コマのようなそのゆるくおしゃべりをする時間が非常に大事。親や家族には話せないことを同年代の友だちと目的もなく結論もなくやり取りをしてなんとなく共有するという時間が、家から一歩出たところで安心できる場所として機能しているのだそうです。

そうやって友だちとつながることができた上で、次の何か、文化祭や部活の試合といった、人と協力し合ってがんばって成し遂げるような熱い青春に向かっていくというお話でした。

つまり、放課後友だちと取りとめもなく話すような時間、「ゆるい青春」の土台があって初めて、文化祭やスポーツなど、友だちと真剣に何かに向かっていくっていうことができる。そうした段階が必要、ということなのです。

ですから、親からすると「いつまでしゃべっているのかな。早く帰ってくればいいのに」と思ってしまいますが、「とても大切な時間なんだ」、と捉えていただけたらいいのかなと思います。

《その2》無茶に思える「夢」も否定しない

2つ目は、「放言」。「言いたい放題に言う」ことが非常に大事だとおっしゃっていました。

どういうことかと言うと、たとえば子どもは「ユーチューバーになりたい」や「投資家になる」、「経営者になって○○したい」など、大きな夢を口にしたりしますよね。そのときに親御さんがあまり干渉しすぎないことが大事なようです。

頭ごなしに「そんなの無理だよ」と言う親御さんは最近は少ないかもしれません。ですが、子どものことは何でも共感してあげようと応援しすぎても重荷になったり、現実を見せるために「それをするならこういうことが必要だよ」と大人の目線で話しても、子どもの気持ちを潰してしまったりするそうです。

芝生の上に座って男の子の話を聞いているお父さん

まだ社会を知らない子どもなので、本気の夢かはわからないけれど、子どもが言ってみたことを「言いっ放しにさせてあげる時間」がじつはとても大切なんだそう。

なぜなら、子ども自身もそこまで責任を持った言葉ではないのは薄々感じていて、なんとなく言ってみただけ、考えの途中でポロっと口にしてみただけ、ということが多いそう。

それを本気に取られてやけに応援されたり、潰されてしまうと、口に出すのが嫌になったり、怖くなってしまったりと、話さなくなってしまうんですね。

子どもはおしゃべりをしながら、言葉にしながら自分の考えを構築していく入り口にいるのに、親子での対話が減ってしまうと、いろいろな考えを組み立てる練習中の子どもにとっては練習の場を失ってしまうことになります。

ですから、「言いっ放し」にさせてあげる。それが親からすると「どうかな?」と思うことでも、すぐに結果が出るわけではありません。追い追いその子が成長していった先で現実というのは社会から突きつけられますから、親がその手前で潰してしまう必要はない、ということなのです。

その夢に向かって行く途中で、また別の夢に出会うかもしれません。子ども自身が持っている「○○がしたいな」「こういうのどうかな」という気持ちを潰したり、変に広げたりするようなことは、できるだけしないであげてほしい、とおっしゃっていました。

「ゆるい青春」と「放言」が意欲を育てる

ビーンズでは、不登校が長くなってしまったお子さんたち、上に言ったようなことを大切にして向き合っていく中で、子どもたちが自分の考えを話してくれるようになったり、新しい友だちと「ゆるい青春」のようなつながりを持てるようになったりしたそうです。

それがまた、次の進学や就職など、社会に出る意欲につながっていったり、そういう意欲を育むということを、大勢のお子さんと向き合ってきた経験からおっしゃっていたのが印象的でした。

バルコニーに並んだ制服を着た5人の学生

私自身、子どもが無責任に言ったことに一喜一憂したり、友だちとの長いおしゃべりも、「もう部活はとっくに終わってるよね。早く帰ってくればいいのに」と思うことがよくあったので、もっと早く知っていればよかったなと思います。

お子さんが小学校4、5年生になって、「友だちとおしゃべりしていてちょっと遅くなっちゃった」というときは、怒るのではなく「とてもいいことなんだな」と捉えていただくと、親御さんも気持ちがラクになると思いますし、間違った対応でお子さんを傷つけたり、大事な機会を奪ってしまうことも減ると思いますので、ぜひ参考にしていただければうれしいです。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

『コソダテのヒント』シリーズ

井坂 敦子(いさか あつこ)さん

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範

慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』(KADOKAWA)が9月22日発売。Instagramブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

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