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「うちの子ボーっとして心配」な保護者必見! 脳のパフォーマンスが上がる仕組みとは?【コソダテのヒント】

「うちの子ボーっとして心配」な保護者必見! 脳のパフォーマンスが上がる仕組みとは?【コソダテのヒント】

元保育園園長で、現在子育てや教育関連の講演会を配信している「花まる子育てカレッジ」ディレクター井坂敦子さんによる連載です。音声配信Voicy『コソダテ・ラジオ』の「子育てが楽しくなる小さなヒント」を読みやすく記事化しております。ぜひお楽しみください。

子どもに集中力を身につけさせたい!

「うちの子、飽きっぽいな」「集中力がなくて心配」という親御さんの声、よく聞かれます。

以前、応用神経科学者の青砥瑞人さんという方のお話を伺いました。青砥さんは、アメリカの大学、UCLAを飛び級でご卒業された優秀な方。脳について詳しく、脳科学、教育、ITの分野を掛け合わせた活動をされています。

青砥さんには『4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中』という著書があり、「高い集中力」や「幸せな状態」のメカニズムについて書かれています。そんな青砥さんの「集中」についてのお話から、私が印象的だったことをご紹介させていただきます。

集中には4種類ある?「狭い集中」とは?

子育てをしていると、「集中力を身につけてほしい」と思うのは親心。集中力があればいろいろなことが短時間で身についたり、パフォーマンスが上がる気がしますので、勉強にしろ、読書にしろ、スポーツや楽器の練習にしろ、限られた時間の中で、集中して取り組んでほしいなと思いますよね。

野球の練習をしている男の子

ここで青砥さんがおっしゃったのが、「親が子どもに対して『集中力』と言うときは、たいがい『外向きの狭い集中』のことです」ということ。

「集中」には、「広い範囲を捉えたもの」と、「フォーカスをぎゅっと絞ったような、狭い範囲のもの」、さらに自分の「内側に向くもの」と「外側に向くもの」があるんだそうです。「内側・外側」、「広い・狭い」という2軸の組み合わせで「4つの集中」があり、多くの親が子どもに望んでいることは、たいてい外側に狭く集中した状態なんだそう。

先ほど挙げた勉強やスポーツなども、「外側に向けたとても狭い部分にフォーカスを絞った状態で、集中して暗記したり取り組んでほしいと捉えてると思いますが、じつはそれ以外にも、同じ『狭く』でも『内側』に集中するということもあります」と青砥さん。

目をつぶって指をこめかみにあて、何か思い返している様子の男の子

たとえば勉強なら、参考書を読んだり問題を解いたりして、その一つひとつにぎゅっと集中して外側にあるものを内側に取り入れる作業は、「外向きの狭い集中」。これに対して、1回学んだことを自分の頭の中で思い出して、「あ、そうだったな」と自分の中で問いかけるような作業、これが「内向きの狭い集中」だそうです。

勉強に関して言うと、大人が自分の子に対してよく口にする「集中=外向きの狭い集中」と、子どもが自分の中で再度思い出して考える「集中=内向きの狭い集中」、その両方があってはじめて記憶は定着し、自分のものとして使える知識になっていくんですよ、というお話でした。

知っておいてほしい「内向きの広い集中」

一方「広い集中」はどんなものかと言うと、広く外向きに集中するイメージでわかりやすいのがスポーツ。たとえばサッカーで考えると、「ボールに集中する」というのは、「狭い集中」ですが、ボールだけを見ていてはサッカーはできません。

「自分の仲間があそこにいて、今こういう動きをしているから、あの辺りにパスを出そう」というように、チーム全体の動き、ピッチ全体に注意を払っている状態が「外向きの広い集中」。音楽で言えば「オーケストラ全体を見る」、お芝居だと「全体の感じを捉える」というところでしょうか。

サッカーコートの中でボールを追いかけている男の子たち

これに対して「内向きの広い集中」は、青砥さんいわく、子どもの場合「外からはボーっとしているように見える状態」らしいのです。たとえば雲をぼんやり見てるようにしか見えないお子さん。頭の中では空想の世界が広がり、いろいろなことを考え、自分の内側に湧き上がってくるイメージを広く捉えているような状態です。

それから、散歩中に「あ、そうだった!」と思いつくような「ひらめき」。脳科学の言葉で「ブレインワンダリング」、「脳のおしゃべり」とも言うそうですが、意識して考えているわけではないけれど、脳の中でひとりでおしゃべりをしているような状態。これも外から見るとボーっとしてるように見えるのですが、とても大事な集中で、科学者がいろいろひらめいたり思いついたりするのは、この内側に広く集中しているときなんだそうです。

公園のベンチに座って、上を向いてボーっとしている男の子

この「内向きの広い集中」状態、ボーっとしている状態、子どもならけっこうありますよね。特に幼児~小学校低学年くらいの頃は多いような気がします。ふと見ると子どもがボーっとしている。親はそこでつい、「これしなさい」「あれしなさい」と、せっついてしまいがちなのですが、じつは脳がおしゃべりしていて、その子自身の内側では、活発な活動が繰り広げられていることもあるそう。

科学者などの場合は、「外向きの狭い集中」で学んだ知識や経験があるから、ひらめきにつながるのだと思いますが、親がその「狭い集中」だけに重きを置いてしまうのは問題です。何事もバランスが大事で、4つの集中もそれぞれバランスよく機能していることで脳全体がハッピーな状態に保たれ、どの集中もしやすくなる、というお話でした。

親はリラックスしてハッピーな状態をつくってあげる

今までたくさんの脳の専門家やお医者さん、研究家の方のお話を聞かせていただきましたが、脳がハッピーな状態だったり、心地よい状態、リラックスできて安心できる状態でないと脳は働かないのだと、皆さん口を揃えます。

ストレスや焦り、恐怖心がある状態、自分にとって心地よくない状況だと、おでこの裏側辺りにある前頭前野が「危険!」と察知して、脳をシャットダウンさせて「逃げろ!」と指令を出すそうなんです。

おやつと飲み物を前にテーブルにつくお母さんと男の子

夫婦や家族で、「これはやろう」、「うちはこれはやらない」と取捨選択して方針が固まってしまえば、揺れることもありま

受験などでは、どうしても「これをやらなくては」「ここが足りてない」と、親子共に焦りやストレスの多い状況になりがちだと思いますが、それはパフォーマンスを下げてしまうのです。ですから、お子さんにはできるだけハッピーに学んでほしいと思います。

日々忙しかったり、受験や試験などが迫っていると難しいかもしれませんが、「脳はハッピーなほうが、よいパフォーマンス、よい集中ができる」と頭の片隅に入れておいていただけると、「ひと息いれてから勉強を始めよう」などど、うまく気分転換や楽しいことを取り入れられるのかなと思います。

 

話し手/井坂敦子 構成/清野 直

『コソダテのヒント』シリーズ

井坂 敦子(いさか あつこ)さん

中学校高等学校教諭一種免許状(国語) /保育士/食育カウンセラー/表千家師範

慶應義塾大学卒業→ 雑誌『オレンジページ』編集部 →公式サイト『オレンジページnet』編集長 →小学校受験対応型保育園園長 →「花まる子育てカレッジ」にて年間約100本の子育てや教育に関する講演会や対談を企画運営。『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』(KADOKAWA)が9月22日発売。Instagramブログ「わが家の小学校受験顛記」も好評。英国留学中の高校生とボーダーコリー3頭の母

学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと編集部)

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