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自尊感情を高めるための親のかかわり方/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第3回】

自尊感情を高めるための親のかかわり方/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第3回】

シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載3回目です。

世界の中でも自尊感情が低い日本の子どもたち

自尊感情という言葉を知っていますか? 良いところもそうではないところも含めて、ありのままの自分のことを好き、大切に思える気持ちのことです。自尊心とか自己肯定感といった表現も使われます。

でも、さまざまな調査で、日本の子どもたちは、その自尊感情が世界の子どもたちと比べて低いと言う結果が出ているんです。

たとえば、国立青少年教育振興機構が行なった日本・米国・中国・韓国の高校生を対象にした調査(*1)によると日本の高校生は、「私は人並み以上の能力がある」「自分は、体力には自信がある」「自分は、勉強が得意な方だ」「自分の希望はいつか叶うと思う」というポジティブな問いに対して、「とてもそう思う」「まあ そう思う」と回答した人の割合は4カ国中で最低でした。逆に「自分はダメな人間だと思うことがある」などネガティブな問いに対して、「とてもそう思う」「まあそう思う」という回答は米国・中国・韓国を大きく上回っているという結果が出ています。

ちょっとショックなデータですね。

2015年8月国立青少年教育振興機構 日米中韓高校生の生活と意識に関する調査報告書より作成

ありのままの自分を大切に思える自尊感情は、生きる根っこ

「ありのままの自分のことを大切に思える」って、人が心身ともに健康に生きるうえでとても大切なことで、自分を支える根っことなる感情ですよね。

そんな大切なものなのに、どうして日本の子どもたちの自尊感情は低いのでしょうか。

そのヒントとして、ものごとを最後までやりとげた達成感や、難しいことにも失敗を恐れずに挑戦する意欲的な意識が低い児童生徒ほど、「自分には、よいところがある」、「今の自分が好きだ」と回答した割合が低いという調査結果(*2-1)があります。このことからは、がんばった結果「できた!」という成功体験がとぼしいと、自尊感情が育ちにくいということがうかがえます。

また、国内の小4~6、中2、高2生を対象とした別の調査(*2-2)では、自己肯定感に関する項目について、学年が上がるほど肯定的な回答が減っていることから、学年が上がるほど、成績などを友だちと比べられる機会が増えて、自信をなくしているのかもしれません。

では、どうすれば自尊感情を高めることができるのでしょう。

ありのままの子どもを受けとめるために

ほめればいいのでしょうか?

最近はほめる子育てという言葉を耳にしますが、ほめるという言葉は案外くせ者です。もちろん、比べられたりけなされたりするより、ほめられた方がうれしいので、自尊感情は高まりそうですが、ほめるというのは、ある意味では評価するということです。

「〇〇ができるあなたはすごい」という条件つきで認めるということにもなりかねません。

わたしたち親は、子どもに良かれと思っていろいろな言葉をかけます。最初は、元気に育ってくれれば良いとだけ思っていいたはずが、日々成長していろいろなことができるようになると、「これができたなら、次はこれも」とついつい期待がふくらみます。

期待することは悪いことではありませんが、期待するあまりよその子どもと比べたり、親の期待通りに動かそうとしすぎると、子どもは「お父さんやお母さんの期待通りにできない自分はダメな子」と思うようになってしまうかもしれません。まずは、目の前のいるありのままの子どもを受けとめてあげましょう。

そのために、ほめるのではなく、「〇〇ができるようになったね。お母さんもうれしいよ」というように、事実を認めて、それに対して感じた自分の気持ちを伝えてあげてください。そうすれば、子どもは自分にはよいところがある、今の自分が好きだと感じることができて、自尊感情を高めることにつながります。

さらに、子どもは認めてもらえた、受けとめてもらえたと感じると安心します。この安心感が親子の信頼関係をつくることになります。

これ以外にも、子どもが安心感を感じるためには、小さいお子さんなら甘えてきたらぎゅっと抱きしめてあげたり、うれしいことがあったらいっしょに喜んだり、悲しいことがあったら寄りそってあげたり、いろいろな方法があると思います。

「おはよう」「おかえり」といった声かけも大事ですね。

こうした日々のかかわりが子どもの自尊感情を育てる一歩だとわたしは思います。

そして、前回の「キレる子どもたちの原因は眠りにあり」でお話したように、きちんと睡眠をとるということもお子さんの自尊感情を高めるためには欠かせません。

日々の子育ては、山あり谷ありで思うようにならないこともあると思いますが、まずはありのままのお子さんを受けとめてあげてください。

条件つきではなく、ありのままの子どもを受けとめましょう。

2015年8月国立青少年教育振興機構 日米中韓高校生の生活と意識に関する調査報告書
*1 9.自分について
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/98/

 

日本の子供たちの自己肯定感が低い現状について
※第38回教育再生実行会議(平成28年10月28日)の参考資料2
*2-1「達成感、意欲等に関する子供の意識と自己肯定感との関係」
*2-2「青少年の体験活動等に関する実態調査」における自己肯定感の経年比較
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/chousakai/dai1/siryou4.pdf

関連記事/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素

【第1回】失敗できない人は、成功できません
【第2回】キレる子どもたちの原因は眠りにあり
【第4回】子どもを伸ばす眠りの力

中曽根陽子

中曽根陽子

中曽根陽子

教育ジャーナリスト

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。 “お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。公式サイトhttp://www.waiwainet.com/

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