子どもを伸ばす眠りの力/AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素【第4回】
シリーズ『AI時代を生き抜くために 「失敗力」を育てる6つの栄養素』では、子育てにおいて、どんな時代でも変わらず必要なこと、そして、AI時代に必要な技術や能力の育て方を、6つのカテゴリーに分けて、最新の学術研究などをもとに紹介します。今回は連載4回目です。
子どもが眠らないほんとうの理由は
このシリーズの第2回「キレる子どもたちの原因は眠りにあり」で、脳の健全な発達のために、幼児は夜8時まで、小学生も9時までには寝かせることを第一優先にしようと書いたところ、わたしのもとにさまざまな反響が寄せられました。関心の大きさを感じます。今回は睡眠について、さらにくわしくお伝えします。
子どもは放っておいても、夜眠くなれば、自然に寝るものでしょうか?
答えはノー。だって、子どもの意思に任せていたら、お父さんやお母さんがテレビをみている横で、自分から「先に寝ます!」とは言わないですよね?
子どもは、「もう夜だから寝ようね」と仕向けてあげなければ、一人では睡眠習慣を身につけることはできません。
しかも、大人の睡眠習慣は子どもにも大きく影響を与えます。親が夜更かしで睡眠時間が短ければ、子どももそうなります。
とくに子どもにかかわる時間の長いお母さんの生活リズムが、子どもの睡眠時間に与える影響は大きいのです。みなさんは何時に寝ていますか?
朝の光を浴びて、体内時計をリセット
さまざまな調査で、日本人は、世界と比較して睡眠時間が短いことが知られていますが、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合(※1)も年々増えていて、睡眠不足が体に与える影響が心配されています。
しかし、睡眠時間だけが問題なのではありません。
もうひとつ大切なこと、それは、朝起きて夜寝るという一定の生活リズムです。
人は、夜眠って昼間活動する昼行生物ですから、太陽の動きと合わせて昼間に活動するように、体のすべての機能が作られています。このリズムが体内時計と言われているものです。
しかし、この体内時計は、地球の1日24時間よりちょっと長いリズムなので、毎朝、ほぼ決まった時間に起きて、太陽の光を浴びて体内時計をリセットする必要があります。睡眠時間が足りていても、このリセットがうまくいかず、体内時計のリズムのまま過ごすと、体温や神経の働き、ホルモンの分泌などが狂い、体のさまざまなところに不具合が出てきてしまうのです。
成長ホルモンが出る時間に熟睡しないと、背は伸びず、肥満になる!?
とくに、ホルモンが十分分泌されるかどうかは、子どもの育ちに大きな影響を与えます。
なかでも成長ホルモンは、成長期には軟骨に働きかけて、身長を伸ばします。また、代謝をうながし細胞をリニューアルさせる働きもあり、大人にとっても大事なホルモンです。
また、睡眠と肥満の関係も明らかになっていますが、ここにも成長ホルモンがかかわっています。
富山大学の調査によると、睡眠時間が9時間未満と11時間以上の3歳児の成長を追ったところ、睡眠9時間未満の子どもは中学1年生になるまでに肥満になるリスクが、睡眠11時間以上の子どもの1.59倍になりました。(※2)これは睡眠時間が短いために、脂肪を分解する成長ホルモンの量が減ったことが、主な理由として考えられています。
このように、子どもの育ちに大きな影響を及ぼす成長ホルモンですが、分泌されるピークは夜11時から午前2時ごろだと言われていて、この時間帯に熟睡している必要があります。
また、朝決まった時間に起きて朝日を浴びることで、コルチゾールやセロトニンなど、元気ややる気の源となるホルモンがたくさん分泌されるなど、 睡眠習慣と心身の健康には密接な関係があります。
子どもの健やかな育ちのために、また親自身の健康のために、朝になったら起きて、夜は早く寝るという生活リズムを整えましょう。
参考文献
『「睡眠第一!」ですべてうまくいく』(成田奈緒子、双葉社)
『子どもを伸ばす「眠り」の力』(睡眠文化研究所編、WAVE出版)
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【第2回】キレる子どもたちの原因は眠りにあり
【第3回】自尊感情を高めるための親のかかわり方
【第5回】子どもの話を最後まで聴いていますか?