世界で人気の「日本製アニメ」を支える縁の下の力持ち。仕事はハードだが、注目度は高い
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こんな人にピッタリ!
デッサンやスケッチなど、絵をえがくのが好きな人。人や動物、物の動きをじっくり観察できる人。ねばり強く、集中力があって、体力に自信のある人。
どんな仕事?
アニメーションの映像の元になる大量の絵をえがく
本当は止まっている絵なのに動いて見えるアニメーション。その仕組みは「少しずつちがう絵を連続して見ると動いて見える」という視覚の「残像現象」を利用したもの。ノートのすみに絵を書いて素早くめくると動いて見える「パラパラまんが」と同じ仕組みだ。アニメーターの仕事は、そうした「少しずつちがう絵」を大量にえがくこと。また、少しずつちがう絵には2種類あり、動き始めと終わりなどの動作のポイントとなる絵を「原画」、原画と原画をつなぐ動きのある絵を「動画」という。原画と原画の間を分割する作業なので、動画をえがくことは「中割り」とも呼ばれる。ちなみに、原画は2工程に分かれていることがある。構図を考えて大まかにえがいた「第一原画」と、それを演出担当者や作画の責任者である「作画監督」が修正したものを清書した「第二原画」だ。動画を担当する「動画マン」は、まず原画(第二原画)を写し取り、それに合わせて何枚もの動画をえがいていく。動画の枚数は目指す映像によってちがう。動画の枚数が多いほどなめらかな動きの映像になり、枚数が少ないほど素速い動きの映像になる。動画の枚数を決めるのは、原画を担当する「原画マン」や作画監督の役目。動画マンは指定された枚数でスムーズに動いて見える動画をえがくのだ。正確な動画を大量にえがくなどの実績を上げた動画マンが原画マンにステップアップし、実力をつけた原画マンが作画監督やアニメーション用の登場人物をデザインする「キャラクターデザイナー」を任されるようになる。原画マンや作画監督の経験を積めば、フリーランスとして活躍する道も開ける。さらに、アニメーターから演出や監督の道へ進む人もいる。
これがポイント!
アニメーターを目指す人には画力が大切
アニメーターになるための特別な資格はない。必要なのは、絵をえがく能力である画力。ただし、芸術的で個性的な絵を描く能力ではなく、人体などを正確にえがいたり、想像した動きを表現したりできるデッサン力が欠かせない。また、キャラクターデザインに合わせるために、模写の技術も大切だ。独学で身につけた画力に自信がある人は、人体デッサンなどをまとめた自分の作品集「ポートフォリオ」をアニメ制作会社に提出して入社テストを受ける方法がある。画力に自信をつけたい人やアニメーションの基本を学びたい人は、美術・芸術系の大学・短大やアニメーターを養成する専門学校でデッサンやアニメ技法を学んでおくと就職に有利になるだろう。アニメ制作会社に入社できれば、アニメーターの第一歩である動画マンとして仕事が始まる。いそがしい職場なので、速く正確な動画をえがくために、作画監督や原画マンの絵を正確にトレースして技術を身につける努力が必要だ。
絵をえがかないアニメーターもいる
アニメーションは、平面(2D)にえがかれた絵が動いて見える「2Dアニメ」だけではない。立体(3D)である人形などを少しずつ動かしてカメラで1コマずつ撮影する「ストップモーション・アニメーション」と呼ばれる作品もある。動いて見える仕組みは2Dアニメと同じだ。2Dアニメの絵の代わりに、少しずつちがう写真を使った作品もある。ストップモーション・アニメーションも、撮影する人形などを少しずつ動かすのはアニメーターの仕事。また、現在は3Dのコンピュータ・グラフィックス(CG)を使ってすべての映像を制作する作品もよく眼にする。そうした「3DCGアニメ」でも、キャラクターに動きをつける担当者はアニメーターだ。ストップモーション・アニメも3DCGアニメも、アニメーターが動きのアイデアスケッチをえがくことはあっても、直接に絵をえがくわけではない。だが、どちらも絵をえがくこととはちがう方法でキャラクターが生き生きと動いているように見せている。アニメーションの語源は「命をふきこむ」という意味なので、制作技法はちがってもアニメーターの仕事は同じなのだ。絵をえがくのは苦手だがアニメーターになりたいという人は、目標に加えてみてはいかがだろうか。
将来はこうなる
デジタル作画で作業が効率化される
10年ほど前まで、アニメ制作には大量の「セル画」と呼ばれる絵が使われていた。アニメーターが紙に鉛筆で書いた線画である動画を1枚ずつ透明なシート(セル)に専用機械でコピーして、キャラクターなどの必要な部分に専用塗料を筆を使って着色した絵だ。それを背景画の上に重ねて置き、動きの順番でセル画を取りかえながら1コマずつ映画用フィルムに撮影する。それを映写すると動いて見える仕組みだ。セル画が使われなくなった現在は、手がきの動画をスキャナーでコンピュータに取りこみ、デジタルデータ化した動画に写真加工ソフトなどを使って着色している。そのデータに背景画のデータや音声データを組み合わせ、特殊効果などを加えて映像を完成させる。アニメーターが原画・動画をえがくこと以外は、ほぼコンピュータ上で作業しているのだ。ところが最近では、原画・動画の作業にもデジタル化が進んでいる。紙と鉛筆ではなく「ペンタブレット」という機器を使って、絵をえがく感覚で直接コンピュータに作画データを入力する「デジタル作画」が増えているのだ。紙をスキャンする手間がなくなり、すぐに着色と映像化の工程へ進めるので、作業の効率化が期待されているようだ。また、AIの進歩により、動画(中割り)を自動生成するソフトも生まれている。原画と原画の間をきれいにつなげる単純な動きの動画はAIでも作るようになった。しかし、優れたアニメーターは、あえて均等に割らず、大げさにしたり省略するなどのアニメ技法を加えることで自然な動きに見えるようにしているのだ。これからのアニメーターは、複雑な動きを表現するためのより高度な技術が求められるだろう。アニメーターを目指す人は、画力や想像力をみがくとともに、パソコンやタブレットなどのデジタル機器のあつかいにも慣れておこう。
データボックス
収入は?
平均年収は349~546万円。アニメーターは作業した分の賃金が支払われる「出来高払い」制度であることが多い。原画の場合は1カット(カメラが切り替わるまでの短い映像)分の作画の賃金になる。1カット分の原画枚数は、単純な動きの場合は5~10枚ほど。動きが複雑になるほど原画の枚数は増える。原画の単価は1カットあたり1600~5000円。1か月に100カットえがく原画マンもいる。一方、動画の場合は動画1枚分の賃金となり、1枚あたり150~400円。動画マンが1日にえがく枚数は20枚ほどだが、えがく絵の内容やアニメーターの力量によって作業量と収入は大きく変わる。とくに現在のアニメ作品は映像の質が高いので絵をかきあげるまでの時間がかかり、出来高は減ってしまう。ハードな仕事のわりに収入は低いので、新人のうちは生活に苦労する人も多い。
休暇は?
アニメ制作会社の社員の場合、大企業のような有給休暇や完全週休二日制はあまり望めない。担当する作品の進行具合によっては、徹夜で仕事をしなければならないこともある。フリーランスの場合は、仕事の合間に休むことができる。
職場は?
アニメ制作会社のスタジオ。フリーランスの場合は自宅の仕事場。
なるためチャート
アニメーターの仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!