テレビドラマ、映画、ヒーローショーなどで、着ぐるみを着て役を演じる役者のこと。顔は出さないが、高い所から飛び降りる危険な演技や、かっこよく敵を倒す必殺技で、子どもから大人まで多くの人に夢をあたえる仕事だ。
こんな人にピッタリ!
運動が得意で体力のある人。体を使って感情を表現する演技力がある人。人を楽しませるサービス精神が強い人。
どんな仕事?
テレビや映画、ヒーローショーで見せ場をつくる
テレビドラマや映画に登場するかいじゅうや変身ヒーロー、アニメキャラクター、動物の着ぐるみ人形、地域や団体の宣伝用マスコットキャラクターなどの着ぐるみを着て演技をする。和製英語でスーツアクター(女性はスーツアクトレス)とも呼ばれる。ちなみに、外国映画には着ぐるみで演技をする「クリーチャー・パフォーマー」という仕事がある。日本映画では、まだCGがなかった時代、かいじゅうの巨大感を表現するために、かいじゅうの着ぐるみで町のミニチュアセットをこわす映画技法が生まれた。巨大ヒーローを主人公とする作品では現在も使われている技法だ。一方、仮面などで顔をかくす変身ヒーローを主人公とする作品では、変身後のアクションシーンを主人公の役者に代わって演じることがスーツアクターの仕事になった。そうした映画やテレビの現場だけでなく、観客の前で演じるヒーローショーやアニメのキャラクターショー、動物の着ぐるみ人形劇、マスコットキャラクターがゲスト参加する祭りなどもある。アニメキャラクターショーの場合は、事前に録音された音声を会場に流し、着ぐるみ俳優はそれにそって演技をすることが多い。演技だけでなく、主題歌に合わせてダンスをすることもある。どんな現場でも、着ぐるみの役になりきって見せ場をつくり、観客を喜ばせるのが着ぐるみ俳優の仕事だ。
これがポイント!
養成所や専門学校で基本的な演技力を身につける
着ぐるみ俳優になるための特別な資格や特別な道はない。着ぐるみ俳優も俳優なので、ふつうの俳優やタレントと同じく、基本的な演技力を身につけることから始めよう。独学で学ぶこともできるが、俳優の養成所や専門学校などで学ぶのがいいだろう。変身ヒーローのスーツアクターを目指す場合は、基本的な演技に加えて、武術や戦うシーンの演技「アクション」や危険な演技「スタント」もできなくてはならない。それはアクションタレントやスタントマンの養成所や専門学校で学ぶといいだろう。養成所や専門学校で実力をつけて、俳優事務所に所属するのが一般的な俳優への道だ。事務所から紹介されるオーディションに合格すれば、テレビ番組や映画、キャラクターショーなどに出演できるだろう。最初はわき役でも、そこでいい演技をして注目されれば、代役であるスーツアクターでなく、自分が主役に選ばれるかもしれない。その一方で、地方の小さな俳優事務所に所属し、地元で行なわれるヒーローショーなどでがんばっている着ぐるみ俳優もいる。
体の動きだけで演じる難しさが満足感を生む
着ぐるみ俳優がふつうの俳優と違うのは、顔や体をかくしていることと、基本的に声を出さないので体の動きの演技だけで感情を伝えなくてはならないところ。かいじゅうやマスコットキャラクターを演じる場合は、大げさなアクションが子どもにもわかりやすいことがある。しかし、変身ヒーローのスーツアクターの場合、あくまで変身する役者の代役なので、変身前の役者と大きくちがう演技をするのは禁物だ。変身前の役者の動きのくせや目立ったポーズを演技に取り入れるなどして、同じ役者が演じているように見せなくてはならない。高度な演技力が求められるのだ。また、着ぐるみや変身ヒーローの仮面やスーツは、着用すると視界が悪くなり、手や足の可動域が制限されて自由に動けないこともある。数十キロもの重量がある着ぐるみもあり、風通しも悪いため、素顔で演技をするよりも大変だ。さらに、そんな着ぐるみを着て危険なアクションをこなす度胸を求められることもある。それだけに、苦労を重ねて作り上げたテレビや映画を見た時の満足感はたまらないようだ。
将来はこうなる
演技力をみがき続ける人が活躍する
昔は女性のヒーロー役も男性の着ぐるみ俳優が演じていた。現在は女性の着ぐるみ俳優も増えているが、危険なアクションを男性が担当することもある。また、20代前後のヒーロー役を40代前後のベテラン着ぐるみ俳優が演じるのもめずらしくない。素顔が見えない仕事なので、すぐれた演技力さえあれば、性別や年に関係なく仕事を続けることができるのだ。逆に言えば、自分の演技力を常にみがいていける人が生き残れる厳しい世界でもある。今後もそれは変わらないだろう。その一方で、ゲームの映像制作にも着ぐるみ俳優の演技力が生かされるようになった。ゲームに登場するリアルな3DCG映像の人物の動きは「モーションキャプチャ」と呼ばれる人間の動きを読み取るデジタル技術で作られることが多い。読み取った人間の動きのデータを使って3DCGのキャラクターを動かすのだ。動きを読み取るための専用スーツを着て演技をする役者が「モーションアクター」。その仕事に着ぐるみ俳優の経験者が参加している。自分の顔だけでなく姿も映像には映らないが、3DCGキャラクターの演技という形で作品制作に関われるのだ。着ぐるみ俳優の新たな仕事になっていくかもしれない。
データボックス
収入は?
それまでの経験と、あたえられた役によって大きくちがってくる。平均年収は514~630万円。
休暇は?
ヒーローショー、テレビ、映画など、仕事の内容によってちがってくる。売れっ子になれば、休日は仕事のスケジュールが優先されるため、休みは不定期になる。
職場は?
テレビドラマや映画のロケ地、劇場、ヒーローショーなどが行われる遊園地、祭りやイベント会場など。
なるためチャート
着ぐるみ俳優の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!