手話というコミュニケーション技術を使って、耳がきこえない人や聞こえづらい人と、耳が聞こえる人とをつなぐ橋渡し役。
こんな人にピッタリ!
人と触れ合うのが好きで、表現力が豊かな人。初対面の人を相手にすることが多い仕事なので、新たな出会いに喜びを感じる積極的で社交的な人。
どんな仕事?
耳が聞こえない人や聞こえづらい人の会話を手助けする
「手話」は、耳が聞こえない人や聞こえづらい人など、耳に障害がある人たちが使う会話方法。手や指の動き、顔の表情、目や口の動きなどを使って言葉を表現するものだ。手話通訳士の仕事は、耳に障害がある人と耳が聞こえる人の間に立ち、手話を使って会話の手助けをすること。耳に障害がある人の手話の意味を読み取って耳が聞こえる人に伝え、耳が聞こえる人の言葉を手話を使って耳に障害がある人に伝える。それぞれの思いを正確に伝えなくてはならないので、手話の技術だけでなく、相手の気持ちを理解する能力も大切だ。ちなみに、日本で使われている手話は大きく分けて「日本手話」と「日本語対応手話」の2つがある。日本手話は、日本語とは異なる文法の言語。生まれつき耳が聞こえない人が使うことが多い。一方「日本語対応手話」の文法は日本語とほぼ同じ。日本語に手話の言葉を当てはめたものなので、日本語を話すようになったあとで病気や事故で耳が聞こえなくなった人や耳の聞こえる人が覚えやすいとされている。また、その2つを合わせたような「中間型手話」もある。手話通訳士を目指すならば、さまざまな人と会話ができるように、日本手話と日本語対応手話の両方を使えるようになるのが理想的だ。また、日本語と英語が異なる言語であるように、各国で使われている手話はそれぞれ異なる。手話は世界共通ではないのだ。そこで、耳に障害がある人たちの国際交流の場「世界ろう者会議」や国際的なスポーツ大会「デフリンピック」では、手話の共通語である「国際手話」が公用語として使われている。
これがポイント!
「手話通訳士」として活動するための資格
手話通訳の仕事をするだけならば、特別な資格は必要ない。だが、「手話通訳士」を名乗るには、厚生労働省が認定した社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する「手話通訳士試験(手話通訳技能認定試験)」に合格し、同センターに登録しなくてはならない。20歳以上であれば、学歴は関係なく受験できる。障害者福祉に関する知識、国語の学科試験と聞き取りや読み取りの実技試験が行われる。合格を目指す目安として、手話通訳経験が3年ほど必要と言われている。この公的な資格を取得すると、手話通訳士にのみ認められている「裁判、警察、政見放送関連」の手話通訳を担当できる。だが、その分、試験は難しい。2023年3月現在、手話通訳士として登録しているのは全国で4,072名いる。
資格がいらない「手話通訳者」として技術をみがく
手話通訳士もふくめて、手話通訳を仕事にする人たちは「手話通訳者」と呼ばれる。「裁判、警察、政見放送関連」の仕事をするには「手話通訳士」の資格が必要だが、それ以外の手話通訳の仕事には特別な資格は必要ない。ただし、それぞれが身に付けた手話の技術を証明する民間の検定試験がある。社会福祉法人全国手話研修センターが実施している「全国手話検定試験」とNPO法人手話技能検定協会が実施している「手話技能検定試験」の2つだ。全国手話検定試験は1級・準1級~5級の6段階、手話技能検定試験は1級~7級の7段階の試験があり、合格することで各段階の実力が認定される。上級の合格を目指すことで技術をみがけば、手話通訳者としてよりはば広い仕事を担当できるだろう。
将来はこうなる
特別な場所以外でも手話の技術が活用できる社会に
現在は、多くの都道府県や市区町村の自治体が手話を独自の文法を持つ言語と認め、手話を使いやすい環境作りを進める「手話言語条例」を制定している。東京都の場合、市民や会社が手話を学ぶ機会の用意や、養成・登録した手話通訳者の派遣などを行っている。そうした自治体の公共サービスだけでなく、民間の病院や福祉施設、金融機関・外食産業・交通機関などのサービス業でも手話の技術を持つ人材は重視されている。手話を必用とする人たちを手助けする手話通訳者が活動する場は、どんどん広がっていくだろう。
データボックス
収入は?
登録・所属する団体などによって異なる。平均年収は466~649万円。手話通訳士の仕事だけをしている人は少なく、「福祉団体の手話通訳ができる職員」など、別の仕事もかねている人も多い。
休暇は?
所属する団体、施設などによって異なる。派遣される場合、仕事によっては土日・祝日に働くこともある。
職場は?
福祉事務所、障害者団体、医療団体などに所属する人は、普段はそれぞれの場所で仕事をする。登録した団体などから派遣される場合、毎回異なる場所へ行くことが多い。
なるためチャート
手話通訳士の仕事につくための主なルートが一目で分かるチャートだよ!