江戸時代後半,江戸を中心にさかえた町人文化。文化・文政年間(1804〜1830年)が最盛期にあたるので化政文化とよばれている。
江戸を中心とした町人文化
17世紀の大阪を中心とした元禄文化に代わり,この時代江戸を中心とした町人文化がさかんになってきた。これが化政文化である。元禄文化にくらべて,いきいきとした明るさや,はなやかさがうしなわれたが,こったこのみやこっけいがよろこばれるなど,町人文化として円熟したものである。文化のにない手が都市の豪商だけでなく庶民までふくみ,地方にまで文化が広がったことも,この文化の特色である。
文化の内容
(1)文学…十返舎一九の『東海道中膝栗毛』,式亭三馬の『浮世風呂』などの滑稽本,為永春水の『春色梅児誉美』などの人情本,滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』などの読本,柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』などがよく読まれた。俳諧では,与謝蕪村が自然をうたい,小林一茶は思いやりの深い人生詩をうたった。また,政治や社会をひにくった狂歌では大田南畝(蜀山人)が活躍し,当時の世相をひにくった川柳も新しい文芸としてもてはやされた。
(2)美術…浮世絵が発達して多色刷りの錦絵が生まれ,喜多川歌麿の美人画,葛飾北斎や歌川(安藤)広重の風景画,東洲斎写楽の役者絵などがかかれた。このほか,渡辺崋山の文人画,円山応挙の写生画も有名。司馬江漢は西洋画の遠近法をとりいれ,油絵や銅板画をえがいている。
(3)庶民の娯楽…歌舞伎が人形浄瑠璃の人気を圧倒し,名優があらわれてりっぱな劇場ができた。また,伊勢参りなど寺社参詣や西国への巡礼に出かける人がふえ,京都の祇園祭・江戸の神田祭をはじめ,村祭りや盆踊りもさかんになった。