トマトはなぜ赤いの?
こたえ:
トマトは、種の分類上はナス目ナス科ナス属トマト種の植物で、ナスやピーマンの仲間です1)。南アメリカ大陸のアンデス山脈で生まれたトマトは、大航海時代にヨーロッパへ、江戸時代初期には日本へも伝わり、現代は世界中で食べられています。品種の数は、日本で登録されているだけでも770種(2022年6月現在)2)。世界では1万種以上もあるそうです。
それだけたくさんの品種があれば、大きさや形、味はさまざま。トマトといえば、真っ先に赤色がうかびますが、実際はむらさき色に赤色、だいだい色、黄色、緑色と、色とりどりのトマトが育てられています。
こうした色を決めるのは、皮や実にふくまれている色素の種類です。むらさき色の「アントシアニン」、だいだい色の「β-カロテン」、緑色の「葉緑素」(クロロフィル)、そして赤色の「リコピン」(リコペン)といった色素があります。
リコピンは、動物や植物にふくまれる赤・黄・だいだい色の色素「カロテノイド」の1つです。β-カロテンもカロテノイドの仲間ですが、リコピンは特に「抗酸化力」が強いといわれています3)。抗酸化力とは、細胞にダメージを与える物質「活性酸素」を取りのぞく力※1。ビタミンやポリフェノールなどが抗酸化力の高い物質(抗酸化物質)として知られていて、最近の研究では、花粉症や気管支ぜんそくの症状を軽くする可能性があることも分かっています。トマトのほか、スイカやアンズ、マンゴーなどもリコピンをふくみます。
ところで、学校や家で育てたことがあれば分かるように、赤色のトマトも、花がさき終わって果実をつけたばかりのころは緑色ですね。これは、果実が葉と同じように葉緑体をもち、その中に葉緑素をふくむからです4)※2。果実が成熟するにつれて葉緑素が分解されて、その代わりにリコピンがたくさん合成されるため、だんだん緑色がうすくなって赤色が強くなっていくのです。
トマトが旬をむかえる7~8月は、紫外線が強く、暑さで食欲をなくしがちな時期です。リコピンは、紫外線を浴びることで増えた活性酸素を減らしてくれますし、赤色は食欲をアップさせる色といわれます。夏につかれを感じたときや食欲がないときは、赤色のトマトを食べて元気になりたいですね。
※1 活性酸素は、ふつうの酸素に比べて酸化する力が強くなったもので、わたしたちが呼吸で取り入れた酸素の一部からつくられます5)。体の免疫機能にもかかわる重要な役割をもちますが、増えすぎると細胞にダメージをもたらします。
※2 リコピンもふくまれますが、葉緑素の量が多いため赤色は見えません。
参考 資料
1)カゴメ「トマト博士になろう!」『カゴメ トマト栽培ガイドブック』:https://www.kagome.co.jp/syokuiku/love/tomato-nae/guidebook/pdf/guidebook_07_2205.pdf
2)農林水産・食品産業技術振興協会「流通品種データベース」:https://hinshu-data.jataff.or.jp
3)カゴメ『トマト大学 医学部』:https://www.kagome.co.jp/syokuiku/knowledge/tomato-univ/medical/
4)日本植物生理学会「植物Q&A トマトの色の違いについて」:https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1762
5)厚生労働省「活性酸素と酸化ストレス」『e-ヘルスネット』:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
監修者 :大山 光晴
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