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学校給食やお弁当、食べ物の好き嫌いにどう向き合う?【伊沢式スクールライフ-第4回-】

学校給食やお弁当、食べ物の好き嫌いにどう向き合う?【伊沢式スクールライフ-第4回-】

学校給食やお弁当は、ときに「食べられない」「食べたくない」と感じることもあるかもしれません。好きな食べ物もあれば苦手なものもある――。子どもたちは“食”とどう向き合っていけばいいのでしょうか。

この連載では「学校生活」をテーマに、QuizKnockの伊沢さんに、子どもの頃の思い出とともに、子どもたちや保護者に伝えたいメッセージをうかがっていきます。

第4回目の今回は「食べ物の好き嫌い」について。今は好き嫌いがほとんどないけれど、子どもの頃は「そら豆」が食べられなかったと言う伊沢さん。少年時代の食生活を振り返りながら、「食」との向き合い方について語ってもらいました。

苦手なものは無理に食べ過ぎない。好き嫌いは変化していく

食べ物の好き嫌い、今はまったくと言っていいほどないですね。でも、だんだんと克服していったものはいくつかあるかな。ピーマンは得意じゃなかったし……そら豆は最近になってようやくおいしさに気づいた食べ物です。

振り返ってみると、 意外とささいなきっかけで嫌いになっている食材が多いかもしれません。たとえばそら豆は、保育園のおやつでただ湯がいただけの豆がそのまま出てきて、子どもの僕からしてみればがっかり。それで嫌いになりました。

でも当時、無理に食べさせられなかったことで、自分の中に重たい感情が生まれなかったことがよかったんでしょうね。大人になってから居酒屋で焼きそら豆を食べたら、「あれ? うまいじゃん!」ってなって(笑)。今はむしろ好きな食べ物です。

ピーマンは肉詰めでクリア。ピーマンの味より、肉のうま味と味つけが勝ったことで食べられるようになりました。

こうやって考えると、食べ物の苦手意識って最初に食べたときの印象や、ちょっとしたネガティブな体験がけっこう影響しているような気がします。

学校の給食だと調理方法が限定されるので、将来のことを考えたらそこで無理に食べなくてもいいんじゃないかなと思います。栄養的な側面を度外視したら、ですけど。

第1手 食に対する超えられない壁をつくらない。伊沢式スクールライフ

1度「これなら食べられるな」っていうきっかけがあって、食べられるようになることって全然あると思います。

「食事に文句を言うな」が家訓。でも「逃げ道」があった

じつは僕、わりと“食に厳しい家庭”で育ったんです。父はふだんそんなに怒らない人でしたが、食事に文句を言うことに対してすごく厳しくて。

「これ食べたくない」なんてちょっとでも言おうものなら、最悪その日は食事抜きになることも。その怖さもあって、「とりあえず食べなきゃ」という気持ちで食べていた部分は正直あります。

ただ、うちの食卓は大皿を囲むことが多い印象で、家族3人で取りながら食べるから、ちょっとごまかすこともできたというか(笑)。

食事に文句を言わない絶対ルールはありましたけど、特定の食べ物を無理に食べさせられることはなかった。逃げ道があったんですよね。

「食べること」や「食べ物」に対して超えられない壁、トラウマみたいなものがなかったからこそ、「あのとき苦手だったけど、また食べてみようかな」という再チャレンジする好奇心が生まれたんだと思います。

好き嫌いは“悪”じゃない。“食べる”って本当はもっと自由なこと

給食って家庭事情にかかわらず、子どもに必要な栄養を提供してくれる制度として意義があると思っていて。

それに、郷土料理や、名前も知らないような世界の料理が出てきたりして、いろんな食体験ができるのがいい。地域の特徴や海外の文化に触れるきっかけから、人間の多様性や自分のルーツを知る入り口にもなります。

一方で、「食べる」ことは人間が生きていくことと本質的に結びついている行為。そう考えると、給食には「こうするのが当たり前だ」っていう暗黙のルールが必要以上に多いなと感じることもあります。

毎日同じ時間に、全員が決められた量を残さず食べるってめちゃくちゃ難易度が高くないですか?

今日は食欲がわかないなというコンディションの日もあるし、朝ごはんの時間や量だって人によってそれぞれ。もちろん好き嫌いや個人差もあるわけです。

もちろん、好き嫌いなく何でも食べられるのが理想っていうのもわかります。でも「食べられること」を「好き」と言っていいのか?っていうと、そんなことはない。

第2手 給食を食べきることや好き嫌いをなくすことがゴールじゃない。伊沢式スクールライフ

食べ物って好きか嫌いかの2択ではないと思うんです。その間に「まあ食べられる」のゾーンがあって。

そのゾーンが広かったらもちろんお得ですけど、急に大きくなるもんでもないし、大人になるにつれ段々と嫌い側から好き側へと動いていく食材も多いような気がします。

むしろ、今この場でどうしてもこれを食べなきゃいけない、という体験をして得られるものってなんだろうな、と。

だから苦手な食べ物があったり、みんなと一緒にご飯を食べるのがちょっとしんどい子がいたら、「そんなに気負わなくていいよ」って言いたいですね。

栄養面については大事ですけど、他に何かしら補えるものがあればいいし。

少なくとも、社会でやっていくとか、ルールを守るとか、そういうものは別のところで学んでもいいのかもなと思います。

第3手 好きと嫌いを分断しない間に「まあ食べられる」があってもいい。伊沢式スクールライフ

君にとっての「食」は、君自身が決めていい。自分の好きなものを楽しんで食べて、苦手な食べ物とは、ちょっと距離を取って、変化を待つ。

ほら、人間関係でも苦手な相手とは少し距離を取りながら接することで、「ああ、意外と付き合いやすい人だった」みたいなことがあるじゃないですか(笑)。それと同じかもしれないですね。

 

取材・文/森下真理 編集/石橋沙織(キッズネット) 写真/鈴木謙介 デザイン/曽矢裕子

伊沢 拓司(いざわ たくし)さん

伊沢 拓司(いざわ たくし)さん

伊沢 拓司(いざわ たくし)さん

1994年生まれ。東京大学経済学部卒業。『高校生クイズ』で史上初の個人2連覇を達成。2016年に知的エンタメ集団・QuizKnockを立ち上げ、現在YouTubeチャンネルは登録者数250万人を突破。2019年に株式会社QuizKnockを設立し、CEOに就任。これまで『東大王』『冒険少年』など多くのテレビ番組に出演してきたほか、全国の学校を無償で訪問するプロジェクト「QK GO」は47都道府県訪問を達成するなど、幅広く活動中。

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