長崎県の諫早湾を水門で閉め切り,干潟部分の埋め立てを行い,約940haの農業用地と約2600haの農業用水調整用の淡水池をつくるとした国の大規模事業。諫早湾では昔から干潟の干拓が行われてきたが,狭く傾斜の強い地形から集中豪雨による増水,夏の水不足に悩まされつづけてきた。そこで1950年代から農業用水調整と農業用地の拡大のための大規模干拓事業が構想され,1989(平成元)年,2500億円以上の予算のもとに着工。1997(平成9)年4月,全長7kmの潮受け堤防の水門が閉め切られた。ところが2000年前後から有明海の水質が悪化,とくに佐賀県側の漁業被害は大きく,さまざまな原因は考えられるが諫早湾の干潟の水質浄化作用の低下によることが大きいとされている。沿岸漁業者,環境団体により水門を開門しての環境調査が求められつづけてきたが,国と長崎県はこれに反発,2002年から裁判で争われてきたが,2010(平成22)年12月,福岡高等裁判所は原告側の主張を認め開門を命令,国も上告を断念したため,2012年度から5年間,水門を常時開門して調査を行うことが決まった。