重い食中毒をひきおこす腸管出血性大腸菌の一種。O111とは,菌の表面にあるO抗原が111番目に発見されたという意味で,ほかにも病原性の大腸菌としてO28,O157などが知られている。牛などの家畜の糞便からしばしば見つかり,肉に付着して感染が広まることが多い(牛には症状は出ない)。人に感染すると大腸に寄生し,ベロ毒素(シガ毒素)を出して腸管の細胞を破壊して出血性の大腸炎をひきおこし,はげしい腹痛と血便の症状が現れる。また,ベロ毒素が血液中にとりこまれて溶血性尿毒症症候群,急性脳症をひきおこすこともあり,その場合は重症になり死亡することもある。75.1℃以上で死滅する菌なので肉をよく加熱すれば感染は予防できるが,生肉,十分火の通っていないハンバーグなどを食べて感染する例が多い。◇2011(平成23)年4月,富山・福井・神奈川県の焼き肉チェーン店で韓国の生肉料理ユッケを食べた客にO111による集団食中毒が発生し死亡者も出ている。⇒大腸菌,O157