鎌倉時代(1192〜1333年)にみられる文化。公家文化と武家文化の2つの流れがあり,鎌倉新仏教も誕生した。
武家文化と公家文化の流れ
鎌倉時代は,政治の面で,伝統的な公家政権(朝廷または院)と新しい武家政権の幕府の2つがならびたっていた。この公家と武家の二重支配が文化の面にもあらわれ,和歌や随筆に代表される優美な公家文化と,軍記物・彫刻などに代表されるそぼくで力強く男性的な武家文化の流れがあり,2つの流れは影響しあって新しい文化を生み出していった。この時代に中国から禅宗や建築様式など,宋や元の文化がつたえられたこともわすれてはならない。また,平安時代末期から鎌倉時代はじめに民衆の不安をすくえなかったこれまでの仏教に代わって,新仏教(法然の浄土宗,親鸞の浄土真宗,日蓮の日蓮宗,栄西の臨済宗,道元の曹洞宗など)が成立したことも大きな特色である。
文化の内容
(1)文学…平家一門の盛衰と世の無常を説いた『保元物語』『平治物語』『平家物語』のような軍記物に代表される武家文学と,『新古今和歌集』などの和歌集や鴨長明の『方丈記』や吉田兼好の『徒然草』などの随筆に代表される公家文化があった。また,北条実時によって金沢文庫もつくられている。
(2)美術…仏画や絵巻物が写実風でわかりやすくえがかれ,新たに藤原隆信に始まる肖像画(似絵)がさかんになった。彫刻では,写実的で力強い武士の時代を反映し,東大寺南大門の金剛力士像(運慶・快慶作)などがつくられた。建築では,禅宗とともに禅宗様(唐様)や大仏様(天竺様)とよばれる建築様式が中国からつたえられ,雄大な東大寺南大門や,簡素な円覚寺舎利殿がたてられた。工芸の分野でも,岡崎正宗らの刀剣,加藤景正が中国から製法をつたえて始めたとされる瀬戸焼など,すぐれた工芸品が各地で生まれた。