江戸時代前半,大阪を中心にさかえた清新な町人文化。第5代将軍徳川綱吉の元禄年間(1688〜1704年)が最盛期にあたるので,元禄文化の名がある。
上方に花開いた町人文化
この時代,農業・商業ともにさかんになったが,とくに都市の発達にともなって商業がさかえ,大阪はその中心であった。そして,大阪の町人たちを中心に上方(京都・大阪)に花開いたのが元禄文化である。
コーチ
元禄文化は,そのにない手となった大商人の,比較的自由な気風を反映して,明るく活気にみちた文化であった。
文化の内容
(1)学問…契沖や荷田春満らの国学がさかんになり,儒学では,朱子学派の新井白石,陽明学派では熊沢蕃山,古学派では山鹿素行・荻生徂徠などが活躍した。
(2)文学…井原西鶴は,浮世草子(小説)に町人のいきいきした生活を書き,近松門左衛門は,竹本義太夫が町人の間に広めた浄瑠璃の台本を書き,町人や武士の社会の義理と人情のしがらみに生きる人々をえがいた。また,松尾芭蕉は,各地を旅しながら俳諧を文学にまで高めた。
(3)美術…江戸初期に俵屋宗達が始めた装飾画を,元禄期に尾形光琳が大成した。菱川師宣が木版画による浮世絵を創始し,狩野派では狩野探幽が幕府の御用絵師として活躍した。建築では江戸初期に日光東照宮や桂離宮がたてられた。工芸では蒔絵の技術が発達し,酒井田柿右衛門が有田焼に傑作をのこしている。
(4)風俗…友禅染というそめ方が発明され,はでな小袖がはやる一方,節分・花見・月見・節句などの年中行事が一般化した。また,歌舞伎が浄瑠璃とともに町人の娯楽として発達し,京都に初代坂田藤十郎,江戸に初代市川団十郎らの名優がでて人気を得た。