司法権を使って裁判にあたる国家機関をいい,立法・行政機関から独立している。
〔司法権の独立〕 法が正しく行われているかどうかを監視し,さまざまな紛争を法にもとづいて解決していく権限を司法権という。司法権は裁判所だけがもち,他の政治権力からいっさいの干渉を受けずに裁判が行われることを,司法権の独立という。
〔裁判官の身分保障〕 司法権の独立のために,裁判官の独立がみとめられている。すなわち,裁判官は憲法・法律と自分の良心にのみしたがって独立して裁判を行い,だれにもさしずされない。裁判官が罷免されるのは,第1に弾劾裁判所による弾劾を受けたとき,第2に国民審査で罷免されたとき,第3に心身の故障で職務を行うことができなくなったときである。
〔裁判所の種類〕 次の5種類がある。
(1)最高裁判所…司法権の最高機関で,東京に1か所だけもうけられている。終審裁判所で最終的な違憲立法審査権をもっている。最高裁判所長官と14人の裁判官で構成され,裁判は大法廷または小法廷で行われる。
(2)高等裁判所…下級裁判所のなかでは最上級の裁判所であり,全国に8か所ある。地方裁判所の第1審に対する控訴審や民事事件の上告審を行う。
(3)地方裁判所…原則的な第1審裁判所で,全国に50か所ある。代表的な下級裁判所。
(4)家庭裁判所…家庭に関する事件の調停・審判や少年事件をあつかう。全国50か所。
(5)簡易裁判所…軽微な事件を簡易,迅速に処理する。全国438か所にある。
〔三審制〕 裁判の判決に不服な場合,上訴によって原則として3回まで裁判が受けられることを三審制という。これは,裁判を公正,慎重に行い,人権の保障と裁判のまちがいをふせぐためにとる制度である。
●控訴…第1審の判決に不服な場合,上位の裁判所に裁判のやり直しをうったえること。地方裁判所→高等裁判所など。
●上告…第2審の判決に対する上訴。第2審の判決に不服な場合,次の上位の裁判所に裁判のやり直しをもとめること。高等裁判所→最高裁判所など。
●抗告…裁判所の裁判以外の決定,命令に対して不服を申し立てること。
わが国の裁判は,原則として三審制であるが,特別上告(4審になる),飛躍上告(2審になる)などの例外もある。
〔裁判の種類〕 次の2種類がある。
(1)民事裁判…私人間の権利・義務の争いについての裁判で,金銭の貸し借りや商品の売買などでおきるもの。うったえた人を原告,うったえられた人を被告といい,裁判官は両者の意見を聞き,民法や商法にしたがって判断を下す。なお,国や公共団体と,私人間の争いについての裁判を行政裁判という。
(2)刑事裁判…法律に定められた罪をおかした疑いのある者をさばくもので,有罪,無罪の判決を下す。事情によっては執行猶予がある。罪をおかした疑いのある者=被疑者を取り調べて,裁判所にうったえる(起訴)のが検察官である。起訴された人=被告人が,判決で有罪とみとめられた場合は,法律の定め(刑法)にしたがって,罪に相当する刑罰を裁判官がいいわたす。
〔裁判と人権〕 日本国憲法は,被疑者や被告人の人権を保障するため,次のようなことを定めている。
(1)現行犯以外の逮捕状のない逮捕の禁止,
(2)令状のない住居の捜索や所持品などの押収の禁止,
(3)拷問や残虐な刑罰の禁止,
(4)自己に不利益な供述の強要の禁止(黙秘権)や任意性のない自白を証拠とすることの禁止など。
また,裁判の場合は,
(1)裁判の公開,
(2)公平な裁判所の迅速な公開裁判,
(3)自己に有利な証人を公費で強制的によびよせる権利,
(4)被告人の弁護人依頼権と弁護人に依頼する費用がない場合に,被告人の請求によって国選弁護人をつけてもらう権利,
(5)無罪のときは,判決までに受けた精神上,生活上の損失などを補償してもらう刑事補償請求権などを定め,裁判の公正を保障している。