＊＊さんぎょうかくめい【産業革命】

かんたんな道具による工業（工場制(せい）手工業をふくむ）から，複雑(ふくざつ）な機械(きかい）を使う工場制機械(せいきかい）工業への技術革新(ぎじゅつかくしん）のこと。これによって大量生産(たいりょうせいさん）が始まり，資本主義(しほんしゅぎ）が発展(はってん）し，社会や政治(せいじ）も大きく変動(へんどう）した。

〔産業革命(さんぎょうかくめい）のおこり〕

 イギリスでは，18世紀(せいき）中ごろから木綿(もめん）糸をつむぐ紡績(ぼうせき）の機械(きかい）化がすすみ，良質(りょうしつ）の木綿(もめん）糸が大量(たいりょう）に生産(せいさん）されるようになった。この間，ワットが改良(かいりょう）した蒸気機関(じょうききかん）が動力として実用化した。一方，布(ぬの）を織(お）る工程(こうてい）の機械(きかい）化はおくれたが，力織機(りきしょっき）の発明で解決(かいけつ）された。このように，木綿(もめん）工業からおこった産業革命(さんぎょうかくめい）は，製鉄(せいてつ）業や交通機関(きかん）などにおよんでいった。

〔木綿(もめん）工業と奴隷貿易(どれいぼうえき）〕

 イギリスでは毛織物(けおりもの）業がさかんであったが，産業革命(さんぎょうかくめい）は木綿(もめん）工業からおこった。17世紀(せいき）ごろからヨーロッパで，インド製(せい）の木綿(もめん）に人気が集まり，木綿(もめん）はまた，交換(こうかん）にアフリカで黒人を奴隷(どれい）として買うため，奴隷貿易(どれいぼうえき）にも必要(ひつよう）だった。18世紀(せいき）には木綿(もめん）の需要(じゅよう）はさらに高まり，インド製(せい）より安い木綿(もめん）を大量(たいりょう）につくる機械(きかい）が発明・改良(かいりょう）された。その開発費(ひ）は奴隷貿易(どれいぼうえき）の利益(りえき）によった。

〔産業革命(さんぎょうかくめい）のひろがり〕

 イギリスでは，資本(しほん）家と労働(ろうどう）者よりなる資本主義(しほんしゅぎ）社会がいち早く確立(かくりつ），両者の利害(りがい）の対立がはげしくなる。同時に19世紀(せいき）中ごろは「世界の工場」といわれたほど繁栄(はんえい）した。その一方で，木綿(もめん）に代わって綿花(めんか）を輸出(ゆしゅつ）するようになったインドは，織物(おりもの）業がつぶれ貧困(ひんこん）にあえいだ。イギリスにつづいて，フランス・ドイツ・アメリカ合衆国(がっしゅうこく）などで産業革命(さんぎょうかくめい）が始まり，各国(かっこく）は安い原料(げんりょう）を買い大量(たいりょう）の商品を売るため，アジア・アフリカ・ラテンアメリカにのりだし，植民地(しょくみんち）化をすすめた。

〔日本の産業革命(さんぎょうかくめい）〕

 明治政府(めいじせいふ）は当初(とうしょ），殖産興業(しょくさんこうぎょう）政策(せいさく）をとり，近代産業(さんぎょう）の保護(ほご）・育成(いくせい）につとめたが，1880年ごろから民間(みんかん）企業(きぎょう）による紡績(ぼうせき）業や製糸(せいし）業が発達(はったつ）した。日清戦争(にっしんせんそう）後は，政府(せいふ）が賠償(ばいしょう）金の多くを軍事費(ぐんじひ）にあて，八幡製鉄所(やはたせいてつじょ）など官営(かんえい）工場をたて重工業の発達(はったつ）をうながし，資本主義(しほんしゅぎ）社会が確立(かくりつ）していった。

コーチ

 世界に先がけて，イギリスで産業革命(さんぎょうかくめい）がおこった理由は，

（1）市民革命(しみんかくめい）をへて実権(じっけん）をにぎった市民(しみん）が，毛織物(けおりもの）工業などで資本(しほん）をたくわえていた。

（2）海外発展(はってん）が成功(せいこう）して世界に市場をもった。

（3）囲(かこ）い込(こ）みで土地をうしなった農民(のうみん）が，工場労働(ろうどう）者となった，など。