(1919〜2013)昭和・平成時代の狂言師。江戸時代からつづく狂言大蔵流の,11世千五郎(3世千作)の長男として京都に生まれる。1924(大正13)年,4歳で初舞台。40(昭和15)年に「釣狐」で一人前の狂言師として認められる。太平洋戦争で海軍に召集され,終戦後は全国の学校を回って狂言の普及につとめたほか,新作や歌舞伎との競演,テレビ出演など狂言の新しい魅力を発信しつづけた。66(昭和41)年,12世千五郎を襲名,89(平成1)年には人間国宝(重要無形文化財保持者)に指定された。94(平成6)年,千五郎の名跡を長男にゆずり千作を襲名。高い技術にもとづいたおおらかな芸風で,明朗な狂言を得意とし,福福しい顔と大きな声,温かな人柄でだれからも親しまれた。