**ぜんせん【前線】

性質(せいしつ)の異(こと)なる2つの気団(きだん)の境界(きょうかい)面(前線面)が地表面と交わってつくる線。前線を境(さかい)にして気温・露点(ろてん)・風向風速などが急にかわる。前線といってもある程度(ていど)の幅(はば)をもち,幅(はば)が広いときには前線帯(たい)とよぶ。

〔前線の種類(しゅるい)〕

 北半球的(きたはんきゅうてき)な規模(きぼ)で見ると,寒帯(かんたい)気団(きだん)と熱帯(ねったい)気団(きだん)のふれ合う寒帯(かんたい)前線,北極気団(ほっきょくきだん)と寒帯気団(かんたいきだん)のふれ合う北極(ほっきょく)前線などがあるが,ふつう前線といえば寒冷(かんれい)前線・温暖(おんだん)前線・閉(へい)そく前線・停滞(ていたい)前線をさすことが多い。寒冷(かんれい)前線は温帯低気圧(おんたいていきあつ)の中心から南西にのびる前線で,寒気が暖気(だんき)の下にもぐりこんで暖気(だんき)を上昇(じょうしょう)させ,積乱雲(せきらんうん)を発生させる。温暖(おんだん)前線は温帯低気圧(おんたいていきあつ)の中心から南東にのびる前線で,寒気の上に暖気(だんき)がはいあがるため上昇(じょうしょう)気流が発生して,下層(かそう)の乱層雲(らんそううん)から上層(じょうそう)の巻雲(けんうん)にいたる各種(かくしゅ)の雲が発生する。閉(へい)そく前線は寒冷(かんれい)前線が温暖(おんだん)前線に追いついてできる前線,停滞(ていたい)前線は寒気と暖気(だんき)の勢力(せいりょく)が等しいときにできる前線である。停滞(ていたい)前線の構造(こうぞう)は温暖(おんだん)前線と同じで,本州の南岸にそって発生するのが見られる。梅雨(ばいう)前線や秋雨(あきさめ)前線は停滞(ていたい)前線である。

コーチ

 温暖(おんだん)前線の地面に対する傾(かたむ)きはふつう300分の1,寒冷(かんれい)前線の傾(かたむ)きは25分の1から100分の1程度(ていど)である。

〔前線と天気〕

 前線付近(ふきん)や前線の通過(つうか)時には特有(とくゆう)の天気の変化(へんか)が見られる。

(1)温暖(おんだん)前線…温暖(おんだん)前線が近づいてくると,巻層雲(けんそううん)などの上層(じょうそう)の雲があらわれ,しだいに高層雲(こうそううん)などの中層(ちゅうそう)の雲にかわり,雲量(うんりょう)もふえ,やがて乱層雲(らんそううん)などの雲にかわる。まもなく雨がふりだし,前線がさらに近づくと,気圧(きあつ)も下がる。温暖(おんだん)前線が通過(つうか)するときには,多くの場合,風は時計まわりに南風または南東風から,南西風または西風にかわるが,はっきりしないこともある。気圧(きあつ)は前線の通過(つうか)によって,一時的(いちじてき)に上がることもある。温暖(おんだん)前線が通過(つうか)したあとは,あたたかい空気(暖域(だんいき))におおわれ,晴れ間が多くなる。気温は上がり,湿度(しつど)は下がる。

(2)寒冷(かんれい)前線…寒冷(かんれい)前線が近づいてくると,南西風がしだいに強まり,北西の空に積乱雲(せきらんうん)があらわれる。前線が通過(つうか)する少し前から,急にくもり,にわか雨や雷雨(らいう)にみまわれ,突風(とっぷう)をともなうこともある。寒冷(かんれい)前線が通過(つうか)すると,多くの場合,風は時計まわりに,南西風から北西風にかわる。

コーチ

 温暖(おんだん)前線の雨域(いき)は北東側(がわ)に幅(はば)300km,寒冷(かんれい)前線の雨域(いき)は前線にそって幅(はば)70kmにわたる。

(3)閉(へい)そく前線…寒冷(かんれい)前線が温暖(おんだん)前線に追いつくと,暖気(だんき)が上昇(じょうしょう)するために積乱雲(せきらんうん)が生じ,広い範囲(はんい)に雨や雪がふる。

(4)停滞(ていたい)前線…前線の北側(がわ)では長雨がふりつづく。南側(がわ)は晴れまたはくもりのことが多い。北側(がわ)は北東の風,南側(がわ)は南よりの風がふくことが多い。

コーチ

 日本本土上に停滞(ていたい)前線がいすわると,梅雨(つゆ)や秋の長雨となり,じめじめとし,食中毒(ちゅうどく)などがおこりやすい。田植えの時期は多くの水を必要(ひつよう)とするので,梅雨(つゆ)は農業にとってめぐみの雨となる。しかし,梅雨(つゆ)の末期(まっき)などに,停滞(ていたい)前線に水蒸気(すいじょうき)を多量(たりょう)にふくんだ気団(きだん)が侵入(しんにゅう)すると集中豪雨(ごうう)の原因(げんいん)となり,大洪水(こうずい)をおこすことがある。

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