臓器移植という医療行為を適切に実施するための法律で,正式名称は「臓器の移植に関する法律」。1997(平成9)年成立・施行,2009(平成21)年7月改正。法律の中心部分は,臓器提供者(ドナー)についての条件を厳格に定めたところで,改正前の97年法では,(1)臓器提供は本人の書面での意思表示と家族の同意があってはじめて認められ,ドナーは脳死後の提供か心臓停止後の提供かを選択できる。(2)ドナーが脳死後の臓器提供の意思を示した場合のみ,脳死の判定が行われ,ドナーの「人としての死」が認められる。(3)臓器提供ができるのは満15歳以上にかぎられる,としていた。この条件は諸外国にくらべてもきわめてきびしいもので,日本で移植医療が進展しない原因になっているとの指摘や,乳幼児の国内での移植医療の大きな壁となっている点で,法律改正をもとめる声が高まっていた。2009年の改正法では,脳死を「人の死」と前提し(ただし本人・家族は脳死の判定を拒否できる),本人の意思が不明の場合でも家族の同意による臓器提供を認め,年齢制限をなくして0歳児からの臓器提供を可能とした。ただし,一律に脳死を人の死と認めることへの抵抗,乳幼児の脳死判定のむずかしさや臓器移植を目的とした早計な死の判断の可能性など,さまざまな問題点がのこされており,法律の運用にあたっては慎重さがもとめられることになる。改正案は,2010年7月施行。