＊＊たいふう【台風】

東経(とうけい）180度以西(いせい）の北太平洋に発生する熱帯低気圧(ねったいていきあつ）のうち，最大(さいだい）風速が17．2m／s以上(いじょう）のものをいう。

〔台風の発生と発達(はったつ）〕

 台風は，北半球からの北東貿易(ぼうえき）風と南半球からの南東貿易(ぼうえき）風の集まる熱帯(ねったい）収束帯(しゅうそくたい）の，海面水温が26℃以上(いじょう）もあるような暖(あたた）かい海域(かいいき）で発生することが多い。ここで上昇(じょうしょう）気流によって発生する積乱雲(せきらんうん）群(ぐん）は，集まって「熱帯低気圧(ねったいていきあつ）（最大(さいだい）風速17．2m／s未満(みまん））」となり，しだいに発達(はったつ）して台風となる。台風が発達(はったつ）するのは，暖(あたた）かい海面から蒸発(じょうはつ）した水蒸気(すいじょうき）が上昇(じょうしょう）気流によって上層(じょうそう）に運ばれて雲粒(うんりゅう）になるときに，熱(ねつ）が発生するからである。猛烈(もうれつ）に発達(はったつ）した台風の中心気圧(きあつ）は900hPa（ヘクトパスカル）以下(いか）に下降(かこう）することもある。

コーチ

 熱帯低気圧(ねったいていきあつ）は大西洋やカリブ海（ハリケーン），インド洋（サイクロン）などでも発生する。

〔台風の構造(こうぞう）〕

 台風は，北半球では下層(かそう）で空気（風）が左回りに中心に向かってふきこみながら上昇(じょうしょう）し，上昇(じょうしょう）した空気が上層(じょうそう）で右回りに中心からふきだしている巨大(きょだい）な渦(うず）である。なお，南半球では回転する方向は北半球と逆(ぎゃく）である。高さは十数kmであるが，風速15m／s以上(いじょう）の勢力範囲(せいりょくはんい）は大型(おおがた）のもので半径(はんけい）800km以上(いじょう）にもなるものもある。台風は等圧(とうあつ）線がほぼ同心円で，前線をともなわず，中心ほど等圧線(とうあつせん）の間隔(かんかく）がせまく，強い風がふいている。中心付近(ふきん）には台風の目とよばれる風の弱い部分が生じる。発達(はったつ）中の台風の目は明らかで，目の直径(ちょっけい）は20〜200km程度(ていど）である。目の付近(ふきん）には下降(かこう）気流があり，しばしば雲が切れ，青空や星が見える。台風の進行方向の右側(がわ）は，台風にふきこむ風と台風をおし流す風（一般(いっぱん）流）が合わさるので風が強く，危険(きけん）半円といい，進行方向の左側(がわ）は，2つの風の差(さ）となるので風が弱く，可航(かこう）半円という。

〔台風の進路と災害(さいがい）〕

 発生した台風は北太平洋高気圧(こうきあつ）の周辺(しゅうへん）を回るように進み，西進したのちに転向し，向きを北または北東にかえ，8〜9月ごろには日本列島に近づくことが多くなる。台風の進路の東側(がわ）では暴風(ぼうふう）や高潮(たかしお）の災害(さいがい）が，西側(がわ）では大雨の災害(さいがい）がおこりやすい。また，台風が梅雨(ばいう）前線や秋雨(あきさめ）前線を刺激(しげき）して大雨をふらせることがある。台風が北日本に近づくと，大陸(たいりく）から寒気が流入して温帯低気圧(おんたいていきあつ）にかわることがあるが，大雨や強風には注意が必要(ひつよう）である。

コーチ

 台風の進路の右側(がわ）（東側(がわ））では風向が時計回りにかわり，左側(がわ）（西側(がわ））では風向が反時計回りにかわる。