(1886〜1965)明治・大正・昭和時代の小説家。東京日本橋に生まれる。1910(明治43)年,第二次『新思潮』に発表した『刺青』,『スバル』に発表した『少年』で永井荷風にみとめられ,官能的な唯美主義(美を最高の価値や目的とする立場)の作家として登場した。関東大震災後は関西に移住して,日本の古典の伝統を生かした『吉野葛』『盲目物語』『蘆刈』などを書き,『春琴抄』の円熟した世界に達した。一方,『源氏物語』の現代語訳を行い,第二次世界大戦中から戦後にかけて大作『細雪』を完成させた。ほかに『痴人の愛』『卍』『少将滋幹の母』『鍵』『瘋癲老人日記』など。◇1949(昭和24)年に文化勲章を受章。