鉄鋼製品をつくる工業。高炉で鉄鉱石をとかして銑鉄をつくる製銑業,転炉を中心に鋼をつくる製鋼業,鋼を圧延して各種の鋼材をつくる圧延・加工業の3部門からなる。この3部門を一貫して行う製鉄所を銑鋼一貫製鉄所といい,鉄鋼業の中心になっている。製鉄業ともいう。
〔特色〕
鉄鋼は土木・
建築,自動車,電気
機械,
造船など
供給先が多く,
最も
重要な
金属であるため,
鉄鋼業は一国の
経済を左右する
基幹産業といえる。また,
巨大な
資本と
生産設備,
多量の
原料を
必要とする工業である。
鉄鋼業は
世界的には
原料産地,とくに
内陸の炭田
地帯に立地しているのが
一般的であるが,
原料のとぼしい日本では,
原料・
製品の
輸送に
便利な
臨海地域に立地している。近年は,イギリス・フランス・アメリカ
合衆国などでも,
臨海地域に新しい
製鉄所を
建設した
例がふえている。
〔歴史〕
近代鉄鋼業の
発祥地はイギリスで,18
世紀半ば
以降の
産業革命にともなう
鉄鋼需要の高まりと,近代
鉄鋼技術の発明・
発展とがあいまって,
生産が
飛躍的に
増大した。
産業革命の
進展とともにドイツ・アメリカ
合衆国・フランスも近代
鉄鋼業を
確立し,第二次世界
大戦までは,この4か国が世界
鉄鋼生産の中心地であった。日本の近代
鉄鋼業は1857(
安政4)年
釜石(
岩手県)に
建設された洋式
高炉の
操業に始まるが,
本格的な
発展の
基礎は1901(
明治34)年の
官営八幡製鉄所における
銑鋼一貫操業により発足した。そして
現在では,世界トップクラスの
生産設備と
生産技術をもつ
鉄鋼生産国に
成長している。
〔現状〕
現在の
主要鉄鋼生産国は,アメリカ
合衆国・日本・ドイツ・中国・ロシアなどで,近年は
韓国や
原料にめぐまれたブラジルなども
伸長した。日本は第二次世界
大戦前,
原料の多くを中国(
鉄鉱石・石炭)・マレー(
鉄鉱石)などに
依存したが,近年は,
鉄鉱石はオーストラリア・ブラジル・インドなど,石炭はオーストラリア・インドネシア・中国などから
輸入し,いずれも
輸入依存率が高い。