国会で成立した法律や予算について,政治を実際に行うことを行政というが,この行政についての最高の責任をもっているのが内閣である。
内閣の構成
内閣は内閣総理大臣と国務大臣で構成される。内閣総理大臣は,国会の指名にもとづいて,天皇が任命する(憲法第6条(1))。内閣総理大臣も国務大臣もすべて文民(非軍人)でなければならず(第66条(2)),その過半数は国会議員でなければならない(第68条(1))。
内閣総理大臣の権限
内閣総理大臣は,国の政治の代表者であり,内閣の首長として次のような権限をもっている。
(1)国務大臣を任命または罷免する。
(2)内閣を代表して国会に法律案・予算案を提出する。
(3)一般の国務や外交について国政報告を行う。
(4)自ら閣議(内閣の会議)の議長となって,閣議を主宰する。
コーチ
閣議は秘密会であるが,各国務大臣が集会しないで,議決する案件を各国務大臣の間をもち回って,賛否を決定するもち回り閣議もある。
内閣の仕事
内閣は最高の行政機関として,次のような仕事をしている。
(1)法律や予算を実施し,国務をまとめる。
(2)外交関係を処理し,国会の承認のもとに条約をむすぶ。
(3)公務員を任命するなど,公務員に関する事務を管理する。
(4)法律案や予算案をつくって,国会に提出する。
(5)政令を制定する。
(6)恩赦の決定(刑の全部または一部を減免する)。
(7)国会の召集を決定し,衆議院の解散を決定する。
(8)最高裁判所長官を指名し,その他の裁判官を任命する。
(9)天皇の国事行為に助言と承認を行う。
内閣の総辞職
内閣の総辞職とは,内閣を構成している内閣総理大臣および全閣僚が,同時にその職を去ることで,憲法上は次のような場合がある。
(1)衆議院で内閣不信任決議案が可決されたり,あるいは信任決議案が否決された場合,10日以内に衆議院が解散されないとき。
(2)内閣総理大臣が死亡・除名など,資格要件をうしなったとき。
(3)衆議院総選挙後,初めて国会が召集されたとき,などである。
議院内閣制
内閣が国会から生まれ,国会の信任にもとづいてなりたち,国会に対して連帯して責任を負う制度を議院内閣制という。わが国の憲法では,
(1)内閣総理大臣は国会議員の中から指名されること(第67条),
(2)指名は国会の議決によって行われること(第67条),
(3)衆議院が内閣不信任決議をしたときは,内閣は10日以内に総辞職するか衆議院を解散すること(第69条),
(4)内閣は行政権の行使について国会に連帯して責任を負うこと(第66条)などが定められている。
行政のしくみ
内閣は,その行政事務を行うために,その下に,財務省・外務省・経済産業省・総務省など13の省庁と1つの府(内閣府)をもうけている。省や府は,多くの局・部などに分かれ,多くの公務員が分担して仕事を行っている。多くの省や府は,内容的にある程度独自性をもつ仕事をするために,外局(庁と行政委員会)をもうけている。庁には金融庁などがある。
コーチ
行政のしくみと関連して,行政委員会,会計検査院,人事院についても理解を深めておこう。
公務員制度
国や地方公共団体に勤めている人を公務員という。公務員は,憲法第15条で,一部の国民に奉仕するのではなく,国民全体に奉仕しなければならないと定められている。◇公務員は,国の仕事に従事する国家公務員と,地方公共団体の仕事に従事する地方公務員に分けられる。いずれも一般職(一般の職員)と特別職(国の場合は内閣総理大臣や裁判官など,地方公共団体の場合は知事・市区町村長など)の区別がある。
コーチ
公務員は,公共の利益のためにのみ勤務する義務を負う。また,一般企業の職員とは異なって,法律で争議行為が禁止されているなど,多くの制限を受ける。