国家ではなく人間1人1人に焦点をあて,さまざまな脅威から個人を守ろうという考え方。グローバル化が進むにつれて,地域紛争,貧困や飢餓・感染症の拡大,自然災害,環境破壊,テロリズム,金融危機などが国境を越えて起こるようになり,個人の生命や生活に脅威を及ぼすようになった。それらに備えるためには,これまでのような国家を中心とした安全保障だけでは対処しきれなくなってきたことから,人間の安全保障の考えが生まれた。この考え方は1994年に国連開発計画(UNDP)が初めて発表して以来,国連総会や主要国首脳会議をはじめとする国際会議でも議題として取り上げられるようになった。2012年には国連総会において,人間の安全保障を進めるための「人間の安全保障の共通理解に関する総会決議」が採択された。