発電事業と送電事業を別々の会社によって行わせようという考え方。これまで日本では発電・送電・配電(電気小売り)を,管内の電力会社が一体で管理し,独占した事業を行っている。ぼう大な送電網を維持することによって電力会社は巨大な原子力・火力発電所を遠くにつくり,都市に大量に電力を供給することができる。この送電網を一種の公共財と考え,発電事業から分離すれば,たとえば都市近郊に小規模な自然エネルギー発電所を設けた電力供給,ほとんどの大工場がもつ自家発電装置からの売電など,地域に合わせた,発電事業者の新規参入がうながされる可能性が大きい。1990年代,欧米では電力自由化にともない発送電分離が進み,日本でも2002(平成14)年に政府内で発送電分離の検討が行われたが,安定供給の確保ができないという電力会社の猛反発によって立ち消えになった。2011(平成23)年3月の東日本大震災をうけて,電力供給の問題があらわになり,エネルギー政策の見直しなどの空気のなか,ふたたび議論が起こっている。