明治政府が国力を充実させるために,産業の育成・軍備の強化をはかった政策。富国強兵は,ヨーロッパの絶対王政のもとで重商主義政策が進められたころのスローガン(標語)であったが,日本では明治時代初期に,近代国家を建設するためのスローガンとして使われた。「富国」とは資本主義経済を発展させて国の財政をゆたかにすること,「強兵」とは軍備を充実させて,欧米列強に負けない武力をもつことである。この富国強兵と殖産興業をあいことばに,近代的な政治制度と資本主義の発達がはかられた。富国強兵を実現するため,地租改正によって財政収入の基礎を確立し,徴兵令によって近代的な軍隊がつくられた。また,近代産業の育成,農業の近代化,貨幣や金融制度の整備,交通や通信機関の発達などの殖産興業政策も,富国強兵をめざして進められた。◇こうした政策は国民生活を豊かにはしなかった。