「臨界」とは,核分裂が連鎖反応によって持続的に継続する状態になるさかいめのことで,そこに達すると核分裂は臨界状態になったということになる。原子炉の場合,炉心の核燃料のあいだから制御棒を引き抜いていくと核分裂反応がはじまり,臨界に達する。また,核物質をあつかう段階で連鎖反応がはじまり臨界に達してしまうという場合もある。こうした臨界状態が,起きてはいけない状態(たとえば点検中の原子炉)や起きてはいけない場所で生じたものを臨界事故とよぶ。核分裂が進行している状態であるから大量の放射線(中性子線)が放出され,甚大な被害を出すことになる。これまで臨界事故はアメリカの核兵器工場や旧ソ連の核燃料再処理工場などで起きており,日本でも1999(平成11)年9月,茨城県東海村のJCO東海事業所でウラン溶液の精製作業中に発生,臨界状態が20時間も続き,大量の放射線を被曝した作業員に死者を出している。