＊＊ローマていこく【ローマ帝国】

ローマの共和政(きょうわせい）は，領土(りょうど）が拡大(かくだい）するにしたがってくずれていった。征服戦争(せいふくせんそう）に従軍(じゅうぐん）した中小農民(のうみん）が没落(ぼつらく）し，市民(しみん）による軍隊(ぐんたい）の維持(いじ）が困難(こんなん）になったからである。グラックス兄弟は共和政(きょうわせい）をたてなおそうとして失敗(しっぱい），自分の軍隊(ぐんたい）をもつ有力者が，国の政治(せいじ）を左右するようになった。そのような有力者であったカエサルは，3人による三頭政治(さんとうせいじ）のあと政治権力(せいじけんりょく）を一身に集めたが，共和政派(きょうわせいは）に暗殺(あんさつ）された。つづいてオクタビアヌスも権力(けんりょく）をにぎるが，前27年元老院(げんろういん）からアウグスツス（尊(とうと）い人）の称号(しょうごう）を受け，国家の第一人者として政治(せいじ）を行った。共和政(きょうわせい）の形をのこしたが事実上の独裁政治(どくさいせいじ）で，帝政(ていせい）の始まりである。

以後約(いごやく）200年は，おおむね平和がつづいた。ローマの領土(りょうど）は最大(さいだい）となり，征服(せいふく）地である属州(ぞくしゅう）の人々にもローマの市民権(しみんけん）があたえられた。この時期はローマ文化の全盛(ぜんせい）期でもあった。ギリシャやエジプトなどの影響(えいきょう）を受けたが，大帝国(ていこく）を統治(とうち）する必要(ひつよう）から，法律(ほうりつ）や土木・建築(けんちく）などには独自(どくじ）の優(すぐ）れた才能(さいのう）が発揮(はっき）された。貿易(ぼうえき）は地中海から紅(こう）海をへてインドへものびた。

3世紀(せいき）になると，軍隊(ぐんたい）の反乱(はんらん）がつづいたうえにゲルマン人が侵入(しんにゅう）を始めたので，広い領土(りょうど）は分裂(ぶんれつ）するきざしをみせた。4世紀初(せいきはじ）めコンスタンチヌス帝(てい）は都をビザンチウムにうつし，コンスタンティノープル（現(げん）イスタンブール）と改名(かいめい）し専制(せんせい）君主制(せい）をとり，それまで迫害(はくがい）してきたキリスト教を公認(こうにん）し，帝国(ていこく）の統一(とういつ）をはかった。4世紀末(せいきまつ）のテオドシウス帝(てい）はキリスト教を国教にしたものの分裂(ぶんれつ）への動きをとめられず，死後，2子によって帝国(ていこく）は東西に2分された（395年）。