「地球防衛隊SDGs」第27話・28話解説編「病気になったら病院へ…は当たり前?」
ちょっとむずかしそうだけど、
数万人 に対 して医師 がひとり――救 えるはずの命 を救 えない理由
ねえ、スモール。
世界には、治療を十分に受けられずに亡くなってしまう赤ちゃんが、たくさんいるんだよね。5歳までに亡くなる子どもが年間520万人(※)もいるって聞いて、信じたくない気持ちになっちゃった……。
※UNICEF,WHO,WorldBankGroupandUnitedNations
『LevelsandTrendsinChildMortality2020(2020年度版子どもの死亡における地域(開発レベル)別の傾向)』より、2019年の5歳未満児死亡数
そう、世界にはまだ、病気になっても適切な治療を受けられない子どもたちがたくさんいるんだ。
そのなかには、早く治療すれば死には至らないことの多い病気――たとえば乳幼児の命を多く奪っている「肺炎」、蚊に刺されることで感染する「マラリア」、日本では死に結びつくことのほとんどない「下痢」――もある。アフリカではこの3つの病気になってしまっても、治療が受けられない子どもたちが過半数を占めているんだ(※)。
※UNICEFDATA(Pneumonia2016,Diarrhoea2011-2016,Malaria2013-2015)を参照。
治療を受けられない人が半数を超えているってこと…?
日本で同じ病気になったら、治療を受けられるのに…?
なんでそんなことになるんだろう。
原因のひとつは、途上国では医師が不足しているから。
たとえば日本では、国民414人に対してひとりの医師がいる。でもアフリカ地域のマラウイという国では、6万3694人に対して医師がたったひとりしかいない(※)。
※WHOGlobalHealthObservatorydatarepository(2016)を参照
お医者さんが足りないと、治療が追いつかないよね…!
ほかにも、いろいろ問題があるよ。検査や手術などを行う機械・設備がないこと。予防注射やワクチンといった、基礎的な社会福祉サービスの環境が整っていないこと。それから、みんなが平等に医療を受けるために必要な制度のひとつが……。
「健康保険」などの公的医療保険だね!
そう!
公的医療保険とは、保険料を支払うかわりに、医療費の一部を公的な機関が負担する制度のこと。
日本では、すべての人が何らかの公的医療保険に加入することになっているよ。だから、ケガをしたり病気になったりしたときに、自分が負担する分の料金を医療機関に払って、残りは国民全員が払う保険料の中からまかなう、というしくみになっているんだ。
え~っと、つまり空たちは、みんな公的医療保険に入っていて、保険証を持っている。だから病院に行ってもたくさんお金を払わなくてすむ、ってこと?
そういうこと!
もし、この公的医療保険のしくみがなかったら、治療にかかるすべてのお金を、自分で支払わなきゃいけなくなるよね。
そんなことになったら、お金がない人は、病気やケガの治療が受けられないよ……。
あ、そっか。公的医療保険のような制度があるから、空たちはケガをしたらすぐ病院に行けるんだね。「ひょっとしたら何百万円も治療にかかるかもしれない」って思ったら、こわくて病院に行けなくなっちゃうもん。
病院に行けるのって、実は当たり前じゃないのかな。
いい気づきだね!
みんなが安心して病院に行き、必要な治療を受けられるようにするには、
①十分な数のお医者さんや看護師さん、保健師さんがいること
②治療に必要な機械や設備を整えること
③治療を受けやすくするしくみやサービスがあること
この3つが欠かせないんだ。
世界を見ると、これらの環境が十分に整っているとはいえない国がまだたくさんある。だからSDGsでは「3すべての人に健康と福祉を」という目標が定められているんだよ!
難しい問題だね……。
空たちにもなにかできることはないか、考えてみるよ。
構成・文/塚田智恵美
イラスト/奈良裕己