海面が上昇すると、しずんでしまう島があるって本当?
こたえ:
国際連合の組織「気候変動に関する政府間パネル」(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)は、2014年に公表した「第5次報告書」で「21世紀の間、世界の平均海面水位は上昇を続けるだろう」と予想しています1)※1。その原因の1つとみられるのが、地球の温暖化。温暖化によってグリーンランドなど陸上の氷河・氷床がとけて海に流れ込みんで海水の量が増えることや、水温が高くなって海水の体積が膨張することが主な原因となって、海面水位が高くなると考えられています2)。
では、温暖化によってどのくらい海面水位は高くなるのでしょうか。IPCCの報告書には、最も温暖化が進んだ場合は45~82cm、最も温暖化を抑えた場合でも26~55cm、世界の平均海面水位は上昇するというシミュレーション結果が書かれています※2。日本の場合は、東京湾や伊勢湾、大阪湾では2~3mの高潮に備えて堤防を整備しているため、海面上昇で水没するおそれは少ないでしょう。
けれども世界を見わたすと、海抜が低く、「海面上昇の影響で浸水・水没するかもしれない」といわれている国がいくつもあります。たとえばインド洋にある島国のモルディブは、海抜の平均が1.5mで、最高でも2.4m3)湾に面したバングラデシュは、国土のおよそ半分が海抜6~7m以下です4)。南太平洋のツバルは、海抜が最高でも5m未満ですし5)、西ヨーロッパのオランダも、国土の4分の1が海面より低い土地です6)。
IPCCの
※1 IPCCは、
※2 1986~2005
浸水や水没の原因は、海面上昇だけではありません7)。ツバルの場合は、第二次世界大戦中、アメリカ軍の飛行場建設のために土砂をほりおこしたことや、首都に人口が集中し、以前は住んでいなかった低い土地にも人が住むようになったことも、浸水の原因と言われています。また、ツバルの海岸は「星の砂」とよばれる有孔虫の死がいでできていますが、生活排水によって水質が悪化し、有孔虫が減っていることが関係している、という意見もあります。
参考 資料
1)環境省「IPCC第5次評価報告書の概要 第1作業部会(自然科学的根拠)」.2014年12月:https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf
2)国立環境研究所 地球環境研究センター『ココが知りたい地球温暖化 Q3「海面上昇とゼロメートル地帯」』:https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/7/7-1/qa_7-1-j.html
3)外務省「わかる! 国際情勢 Vol.156 モルディブという国ー日・モルディブ外交関係樹立50周年」:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol156/index.html
4)国土交通省国土政策局「各国の国土政策の概要 バングラデシュ」:https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/international/spw/general/bangladesh/index.html
5)外務省『ツバルに対する電力の安定供給等のための燃油の供与(無償資金協力「経済社会開発計画」)』.2018年5月23日:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006043.html
6)国土交通省国土政策局「各国の国土政策の概要 オランダ」:https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/international/spw/general/netherlands/index.html
7)外務省「わかる! 国際情勢 Vol.27 水没が懸念される国々~ツバルを通してみる太平洋島嶼国」:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol27/index.html
監修者 :大山 光晴
1957