地球はいつ滅亡するの?
こたえ:50
夜空にかがやく星をつないで動物や人、道具などにたとえる「星座」。いくつ知っていますか? 今、地球から見える星座は88もあります1)。夏なら「さそり座」や「はくちょう座」「こと座」「わし座」が見えるでしょう。冬になれば「オリオン座」や「おうし座」「おおいぬ座」「こいぬ座」などがよく見えるはずです。
このように観測できる星のほとんどは、太陽と同じように自分のエネルギーで光る恒星です。水素やヘリウムといったガスでできていて、それらが中心部分で核融合反応をくり返すことによって光や熱を放っているのです※1。
そんな恒星の1つで、冬を代表する星座・オリオン座の1等星「ベテルギウス」に今、異変が起きています。恒星の中で10位以内に入るほど明るかったベテルギウスが2019年10月からどんどん暗くなってきて、12月中旬には20位以下になってしまったそうです2)。研究者たちはこの現象を「超新星爆発の前兆か?」と注目しています。超新星爆発とは、核融合の燃料を使いはたした恒星が死ぬときに起こす爆発のこと3)。超新星爆発が起きると、その恒星のほとんどの部分がふき飛ばされ、中心部に中性子星やブラックホールができます。
地球などの惑星は、恒星とちがって爆発しませんから、地球が爆発して滅亡することはありません。また、ベテルギウスほど重くない太陽は超新星爆発を起こさないので、太陽が爆発してできたブラックホールに地球がのみこまれる、ということもありません。
ただし、太陽が中心部で水素を使いはたすと、超新星爆発の前の段階である「赤色巨星」になります。「巨星」という名の通り、このとき太陽は熱や光を出す範囲を広げ、どんどん膨張していきます※2。その大きさは、地球の公転軌道を超えるほど。ですから、地球も赤色巨星になった太陽にのみこまれてしまう、と考えられています。
けれども最近は、「地球は太陽にのみこまれない」という意見もあるようです4)。その理由の1つは、太陽が巨大化すると質量(重さ)が減って引力が弱まり、地球が外側にズレていくと考えられるからです。大きくズレれば、地球は太陽にのみこまれずにすむでしょう。もっとも、ほかの惑星も太陽の影響を受けるので、どのくらいズレるのか、本当にズレるのかを判断するのはむずかしいところ。研究者の中には、太陽が膨張しても質量はそれほど変わらないから、地球は少ししか移動しない、という人もいます。のみこまれずにすんだとしても、太陽との距離が近すぎて、地球は蒸発してしまうかもしれません。
いずれにしても、太陽が寿命をむかえるのは50億年も先の話です。その前に、地球上から生物が消えてしまうでしょう。太陽は50億年後に向けて少しずつ明るさ(太陽光度)を増していて、それにつれて放出するエネルギーも増えていきます。すると、地球からたくさんの水分が蒸発して地表が暑くなり、生物が住めなくなるのです。まず、今から5億年後に植物が姿を消しはじめ、28億年後にはすべての生命が死滅するだろう、という研究結果があります5)。
※1 いくつかの原子核がくっついて新しい原子ができることを「核融合反応」といいます。恒星では、水素原子が核融合してヘリウム原子がつくられています。どんな星でも中心部分の水素には限りがあるので、だんだん水素がなくなってヘリウムがたまってくると、やがて核融合反応が止まり、その星は次の段階である赤色巨星になります6)。
※2 星が膨張するにつれて表面温度が下がり、太陽が黄色から赤色に変わるので、名前に「赤色」と付いています。赤色巨星となった太陽は、その後ちぢんでいき、「白色矮星」(はくしょくわいせい)となって一生を終えます。
記事公開:2021年4月
参考資料
1)「星(恒星)のギモン 星座の数はどれぐらいあるのですか?」『宇宙科学研究所キッズサイト 宇宙かがく大好き! ウチューンズ』:
https://www.kids.isas.jaxa.jp/faq/star/st01/000179.html
2)「オリオン座の巨星に異変、超新星爆発が近い?」『ナショナルジオグラフィック 日本版』:
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/010600006/
3)「星(恒星)のギモン 星は死ぬって本当ですか?」『宇宙科学研究所キッズサイト 宇宙かがく大好き! ウチューンズ』:
https://www.kids.isas.jaxa.jp/faq/star/st03/000162.html
4)「太陽にのみ込まれる運命」『日経サイエンス』.2008年11月号:
https://www.nikkei-science.com/?p=17236
5)「地球の生命、高温化で28億年後に死滅?」『ナショナルジオグラフィック 日本版』.2013年10月29日:
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8491/
6)ホヴァート・スヒリング/著,生田ちさと/監修,武井摩利/訳『世界で一番美しい深宇宙図鑑 太陽系から宇宙の果てまで』.2016年.創元社
監修者:大山光晴
1957年東京都生まれ。東京工業大学大学院修士課程修了。高等学校の物理教諭、千葉県教育委員会指導主事、千葉県立長生高等学校校長等を経て、現在、秀明大学学校教師学部教授として「理数探究」や「総合的な学習の時間」の指導方法について講義・演習を担当している。科学実験教室やテレビの実験番組等への出演も多数。千葉市科学館プロジェクト・アドバイザー、日本物理教育学会常務理事、日本科学教育学会及び日本理科教育学会会員、月刊『理科の教育』編集委員等も務める。