星の観察がもっと楽しく! 1等星ランキング
夜空を眺めると、ぱっと目を引く、いくつかの星があります。観察の目的となったり、星座を見つける目印となったりする、ひときわ明るいその星たちは「1等星」です。ここでは1等星の数や、見える季節、色がついているように見えるのは気のせいではないことなどの基本とあわせて、明るさなどをランキングにして紹介します。星空の観察がもっと楽しくなるに違いありません。記事の最後の方に1等星の情報をまとめた一覧表もありますよ。
1等星はたった21個、日本からすべて見える?
明るさで星を分類するのは2000年以上前から
1等星は、「等級」という明るさで分類したときに、最も明るい1等級のグループの星を指します。これは古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスが、人間の目でなんとか見える星を6等星、最も明るい星を1等星として分類したのが始まりです。その考え方が2000年以上たった今でも使われ続けています。その後、1等星の明るさが6等星の100倍ほどであることが分かり、明るさは等級をひとつ上がるごとにおよそ2.5倍に、5等級あがるとちょうど100倍になる決まりに整えられました。
現在では明るさの観測技術が上がったため、1.2等級などと詳しく評価できるほか、6等級よりも暗い7等級や8等級、1等級よりも明るい0等級や−1等級という星もあります。
一般的には1.5等級よりも明るい星を1等星とよび、世界で1等星は21個あります。
日本のどこからでも見える1等星は15個
人間が見える6等星以上の星は、世界でおよそ8600個とされます。おおざっぱに、北半球にある日本からは南半球の星は見えないことにして計算すると、みなさんが見られるのはおよそ4300個です。ただ市街地では街灯などがまぶしく、3等星くらいまでしか見えません。
さて、1等星はどうでしょうか。
1等星は21個のうち、6個が南半球にあるため、日本のどこからでも見えるのは15個です。沖縄県あたりでは南半球の1等星もすべて見えます。そのため、大きく「日本」というくくりで見ると、すべての1等星を見られるとも言えます。
実はカラフルな星空
星を眺めたり、星空の写真を見たりしたとき、星に色がついているように見えると思ったことはありませんか。
それは気のせいではなくて、星はさまざまな色に光っています。星の光は、その星の表面の温度と関わりがあるのです。表面の温度が2000度くらいの星は赤色、そこから温度が高くなるにつれてオレンジ色、黄色、白色になり、1万度くらいの星は青白く見えます。
地上からそのまま見ても分かりづらいですが、双眼鏡などを使って見るだけで、実は星空がカラフルであることを確認できます。
1等星を季節別に紹介
それでは21個の1等星を、日本で見やすい季節と南半球にあるものの5つに分けて紹介します。
春の1等星
春の1等星は3個。うしかい座のアルクトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のレグルスです。春の大三角はアルクトゥルス、スピカと、もう1つは2等星(しし座のデネボラ)です。その2等星の頂点をもう少し高くしたところに、最後の1等星レグルスがあります。
レグルスは「ししの大鎌」とよばれる星の並びの中で、左右反転した「?」の点の位置にあります。
夏の1等星
夏の1等星は4個あり、夏の大三角をつくること座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブで3個。そこから少し離れた赤い星が、さそり座のアンタレスです。ベガは七夕の織姫星、アルタイルが彦星です。アンタレスは大きくなったり小さくなったりしている星で、明るさもおよそ4.7年周期で0.9等級から1.8等級まで変わります。同じく赤く見える惑星の火星と比べられることから「火星の敵」という言葉が名前の由来です。
秋の1等星
秋の1等星は、ただ1個、みなみのうお座のフォーマルハウトです。表面温度が太陽のおよそ6000度よりも高く、およそ9300度あり、白く輝いています。秋の落ち着いた雰囲気の夜空に、フォーマルハウトの光が際立ちます。
冬の1等星
まず季節別でみると最も多い7個の1等星が見えるのが冬。おおいぬ座のシリウス、ぎょしゃ座のカペラ、オリオン座のリゲルとベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おうし座のアルデバラン、ふたご座のポルックスの7個です。シリウス、プロキオン、ベテルギウスが冬の大三角で、ベテルギウスを除く6個は冬のダイヤモンドとよばれます。
冬は空気がすんでいるうえに、7個の1等星それぞれの色味も異なっていて、星空観察が特におすすめの季節です。
南半球の1等星
南半球には6個の1等星があります。りゅうこつ座のカノープス、ケンタウルス座のα星とハダル、エリダヌス座のアケルナル、みなみじゅうじ座のアクルックスとミモザです。エリダヌス座のアケルナルはあまり聞いたことがない星座と星ですが、エリダヌスは川の神様、アケルナルは「川の果て」という言葉が由来といいます。
いずれも沖縄県付近からは見ることができます。アケルナルは九州地方南部より南、さらにカノープスは東北地方の中部より南の地域であれば、地平線に近い位置に姿を現します。
1等星ランキング
1等星を明るさなどでランク付けして、それぞれトップ3を紹介します。
明るいのは?
1等星を、星の魅力の代表である明るさでランク付けします。見た目の明るさである「等級」が最も高いのは、しし座のシリウスで−1.5等級です。シリウスは直径が太陽の1.7倍、表面温度が1万度を超えます。その強く青白い輝きは「焼き焦がすもの」という意味の名前にふさわしいです。
2位はりゅうこつ座のカノープスで−0.7等級、3位はケンタウルス座のα星で−0.3等級です。ケンタウルス座のα星は、人間の目では1個に見えますが、実は星が2個あって、−0.3等級はその2個の星を合わせて1個としたときの数字です。
本当に明るいのは?
星の明るさは、地球との距離が影響します。同じ明るさの光でも、近くにある方が、遠くにある方よりも明るく見えることと同じです。それでは、1等星すべてを、地球から同じ距離に置いたとき、本当に明るいのはどれでしょう。地球から32.6光年(※)の距離においたときの明るさ「絶対等級」で比べます。
1位はオリオン座のリゲルで−7.0等級です。太陽は見た目の明るさは−26.8等級ですが、絶対等級は4.8等級なので、リゲルは太陽の5万倍ほどの明るさで光っていることになります。
2位ははくちょう座のデネブで−6.9等級、3位はりゅうこつ座のカノープスで−5.6等級です。
※1光年は、光が1年間で進む距離で、およそ9兆4600億km。
地球から遠いのは?
明るさと距離の関係には触れましたが、次に地球との距離に着目してみます。地球からの距離が遠い星ランキングです。
1位の最も遠い1等星は、はくちょう座のデネブで地球から1412光年離れています。いま見えているデネブは、日本では飛鳥時代、これから大化の改新(645年)が起きるころの光がようやく地球に届いていることになります。
2位はオリオン座のリゲルで863光年、3位はさそり座のアンタレスで554光年です。
逆に地球に近い星はどうでしょうか。
1位はケンタウルス座のα星で、地球から4.3光年しか離れていません。ケンタウルス座のα星は、AとBの2個が光っている星です。明るい方のα星Aはリギル・ケンタウルス、暗い方のα星Bはトリマンといいます。太陽系に最も近い恒星系で、生物の存在できる環境の惑星があるかもしれず、調査されています。
2位はおおいぬ座のシリウスで8.6光年、3位はこいぬ座のプロキオンで11光年です。
気になる名前3選
最後に名前の意味について興味深い星を3個紹介します。
1個目はオリオン座のベテルギウスで、名前の意味は「巨人のわきの下」です。星は、星座の中の位置や役割が名前になっていることは多いですが、「わきの下」はおもしろいです。ベテルギウスは、「赤色超巨星」という人間でいう老人にあたる星で、一生を終える超新星爆発が近づいているといいます。
2個目はおうし座のアルデバランで、意味は「あとに続くもの」です。日本で「すばる」とよばれる星団に続いて空にのぼるのが理由です。日本でも「すばるのあと星」とよぶ地域があり、昔の人が場所や時代を超えて同じ発想をしたと思うと不思議な気持ちになります。
3個目は、みなみじゅうじ座のアクルックスです。αという記号と、みなみじゅうじ座を意味するクルックスを合わせた造語です。北半球の星や星座の名前は古代ギリシャの文明をルーツとしていますが、南半球の星や星座は16世紀ごろの大航海時代に世界中へ渡ったヨーロッパ人によって名付けられた背景があります。そのころ生まれた名付けのルールもあり、天文学の流れを感じさせます。
初めての1等星観察は天体望遠鏡の体験キットで
『学研の科学 天体望遠鏡:世界とつながるほんもの体験キット 宇宙観測 超入門キット』は、天体望遠鏡、天体の観察ポイントなどを紹介した本誌、学研まんが「星と星座のひみつ」、無料オンラインコミュニティ「あそぶんだ研究所」がセットになっています。
天体望遠鏡は全長46cm、直径6cmのケプラー式で、初心者向けながら本格的な性能です。対物レンズは大口径46mm、焦点距離400mm。接眼レンズは低倍率(15倍)と高倍率(45倍)の2種類。レンズは光学ガラス製で色のにじみが少なく、1等星はもちろん、月のクレーター、土星の環までクリアーに観測できます。スマホでの天体撮影を補助する「スマホガイドリング」も付いています。
あそぶんだ研究所では、学研の科学編集部による生配信のワークショップに参加したり、キットの遊び方を投稿したりして科学を楽しめます。
天体観測デビューやSNSデビューに最適の体験キットです。
価格:4,950円(税込)
発売:2024年12月
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星座早見盤があると観測がスムーズ
いざ星空の観測にでかけたとき、広い空のどのあたりに目当ての星や星座があるか、ゼロから探すのは大変です。1等星は明るくて目立つとはいえ、その周りには十分に明るい2等星もたくさんあるからです。そんなとき、日にちと時刻から、そのときの星と星座の位置がわかる星座早見盤があると便利です。
学研キッズネットの自由研究コーナーに、2枚の型紙をダウンロードして組み合わせるだけで星座早見盤を手作りできるコンテンツがあるので、ぜひ活用してください。
参考資料
・『子供の科学サイエンスブックスNEXT 全21個の特徴をすべて解説 明るい星がよくわかる! 1等星図鑑』(藤井旭著、誠文堂新光社、2024)
・『天文・宇宙の科学 恒星・銀河系内』(渡部潤一著、大日本図書、2012)
・『星座の神話:星座史と星名の意味』(原恵著、恒星社厚生閣、1996)
・名古屋市科学館 一等星データノート2011
・井原市観光協会 21個の一等星一覧表
・なよろ市立天文台 天体ギャラリー
・天文学辞典
・国立科学博物館 宇宙の質問箱 星座編
・Breakthrough Initiatives「Breakthrough Watch Enables Nearby Habitable-zone Exoplanets to be Directly Imaged」
・Kavli IPMU「ベテルギウスはまだ爆発しない –減光の原因を探り恒星の質量、サイズ、距離を改訂-】
・IAU Star Names
・88星座図鑑 南天の星座